研究課題
(A)新奇スフィンゴ糖脂質に関する解析:1)発現分布に関する解析:ALD患者剖検脳で見出した新奇スフィンゴ糖脂質は患者線維芽細胞、発症前保因者血漿、発症患者血漿では存在が確認できなかった。一方患者線維芽細胞では、4つの中性スフィンゴ糖脂質と2つのガングリオシドおよびスフィンゴミエリンの極長鎖脂肪酸を含有する分子種が健常者に比べ有意に増加していることを見出し論文発表した。2)構造解析: m/z 1270-1360の3個のシグナルはスフィンゴイド塩基d18:1とヘキソース3個N-アセチルヘキソサミン1個を有し、脂肪酸が異なるスフィンゴ糖脂質であった。m/z 1260台のシグナルはd18:1の塩基とC24:1脂肪酸とシアル酸を1個有していた。(B)極長鎖脂肪酸含有リン脂質に関する解析:1)合成系の解明: ALDモデルのABCD1欠損細胞で、CRISPR/Cas9法よる欠損で極長鎖脂肪酸含有リン脂質の蓄積が解消し、再度発現すると蓄積するアシルトランスフェラーゼを見出した。極長鎖脂肪酸が本酵素の好適な基質であることを確認した。2)当初計画以外の成果: 血漿について網羅的な脂質解析を行い、対照および女性保因者とABCD1ノックアウトマウスにはなく、ALDの患者に蓄積するリン脂質分子種を見出した。構造解析の結果、ある種の酸化リン脂質分子種であることが明らかとなった。これは発症と関係して増加するため、発症の診断マーカーの候補となり得ると考えられる。さらにホルマリン処理ヒト対照脳に比べてX-ALD患者由来の剖検脳でのみ蓄積が認められる脂質分子種群を見出した。質量イメージングにより脳内の分布を解析したところ、ALD患者剖検脳の白質領域に分布がみられた。構造解析の結果、ある種のコレステロールの脂肪酸エステル分子種であることが明らかとなった。発症機序の一因である可能性が考えられる。
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