研究課題/領域番号 |
20K08220
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
上田 博子 愛知医科大学, 医学部, 助教 (60528959)
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研究分担者 |
垣田 博樹 愛知医科大学, 医学部, 講師 (40528949)
山田 恭聖 愛知医科大学, 医学部, 教授 (60405165)
青山 峰芳 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (70363918)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グリア / 副腎不全 / 新生児脳障害 / 晩期循環不全 |
研究実績の概要 |
脳室周囲白質軟化症(PVL)は在胎34週未満の早産児に発症し、将来の脳性麻痺や発達障害を引き起こす重篤な疾患である。PVLは感染、炎症、低酸素虚血状態などにより局所的な軸索の脱髄が起きる疾患とされている。PVLの発症には、細胞レベルの解析により、局所のオリゴデンドロサイト前駆細胞の選択的障害やミクログリアやアストロサイトの活性化を、はじめとするグリアの機能異常の関与が考えられている。近年の周産期医療の発展により、PVLの原因と考えられている感染、炎症、低酸素虚血状態はコントロールが可能となってきた。しかしながら、PVLの発症のメカニズムとその予防法については完全に解明されておらず、依然としてPVLの発症率は減少していない。PVLの発症にはこれまで考えられている以外の要因が潜在している可能性がある。PVLの発症メカニズムの解明と新規の発症予防法の確立は、現在の周産期医療において大きな課題のひとつである。 近年、急性期離脱後に突然の血圧低下、尿量の低下で発症する晩期循環不全(LCC)が、新しい概念として注目されている。在胎34週未満の約7%に発症する疾患で、高率にPVLを合併することが報告されている。LCCの大きな原因として副腎不全が考えられている。 そこで申請者らはコルチコステロンの合成阻害剤を用いることにより、副腎不全モデルラットの作成を行った。副腎不全モデルラットでは一過性に低ナトリウム血症が起きることを確認した。現在はわれわれが作成したモデルラットの妥当性を評価するため、CRH負荷試験を行いコルチコステロンの分泌が抑制できているかどうかを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
副腎不全モデルラット作成において当初は、両側副腎の摘出を行っていたが、死亡率が高く、長期生存が困難であった。そのためコルチコステロンの合成阻害剤を用いたモデルの作成に変更した。そのため、モデルラットの確立に時間がかかり、当初の計画よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
哺乳3日齢のラットを用い、副腎不全モデルラットを作成する。モデルラットの作成はコルチコステロンの合成阻害剤を用いて作成する。モデルラットでコルチコステロンの分泌が抑制されていることが確認できれば、脳病変の解析を行う。急性期に相当する哺乳5日齢に副腎不全モデルラットと正常ラットの片側総頚動脈結紮と低酸素負荷を行いPVLモデルとして解析を行う。これらのラットの脳から経時的に凍結切片を作成し、脳病変の場所、大きさ、傷害の程度について検討する(図)。 さらに免疫染色を行いオリゴデンドロサイトやニューロンの傷害を検討する。細胞傷害の検討にはTUNNEL染色を用いる。また同時にPVLの発症に関与していると考えられているアストロサイト、ミクログリアの活性化についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
モデル動物の作成方法の変更に伴い、当初予定していた購入動物の数が減ったため。
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