研究課題/領域番号 |
20K08224
|
研究機関 | 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 |
研究代表者 |
中山 敦雄 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 細胞病態研究部, 部長 (50227964)
|
研究分担者 |
松木 亨 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 細胞病態研究部, 主任研究員 (90332329)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | レット症候群 / Mecp2 / 遺伝子治療 / モデルマウス / AAVベクター |
研究実績の概要 |
Rett症候群はX染色体上の遺伝子MECP2の変異により起きる発達障害で、ほとんどの患児は機能消失型変異MECP2のヘテロ接合体となる女児である。原因遺伝子が解明されて以来、正常型MECP2の遺伝子導入による遺伝子治療の可能性が想定され、動物実験が行われて来た。しかしMECP2遺伝子でコードされるメチル化CpG結合タンパクMeCP2は多彩な機能を有し、遺伝子量が過剰になっても有害な副反応が生じる。このため至適量の遺伝子導入が必要であり、動物実験による前臨床段階での検討で止まっている。我々はMECP2により調節されるマイクロRNAの減少がRett症候群でのが神経細胞機能障害を引き起こすことに着目し、MECP2そのものの代わりにこのマイクロRNAが遺伝子補充治療の対象候補になる可能性を想定し、モデル動物での検討を計画した。今年度は基準となるMecp2そのものとマイクロRNA(miR199-a)を導入する為のAAVウイルスベクターを構築した。このベクターを症状が重篤で治療効果が評価しやすいオスモデルマウス(Mecp2-/y)新生仔へ全身径静脈投与し、導入遺伝子の動態と効果を判定した。その結果出生直後のウイルスベクター投与により、生後30日目の脳において十分量の遺伝子発現が得られていることを確認した。しかし、遺伝子導入の有無に関わらずこのモデルマウス(Mecp2-/y)は生後30日ごろまでに死亡してしまい、遺伝子導入の効果判定には至っていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一般的に使われているオスモデルマウス(Mecp2-/y)は、生後5週から15週にかけて死亡することが報告されているが、本研究ではさらに生存期間が短く遺伝子導入の評価にまで至っていない。我々の動物施設は特定病原微生物フリー(SPF)の環境が厳密に維持されており、飼育環境に問題はないものと考えられ、モデルマウスの脆弱性の原因は今のところ同定されていない。
|
今後の研究の推進方策 |
上記のとおり、モデルオスマウス(Mecp2-/y)の生存期間が短いことは将来的な神経学的表現型の評価を行う上では障害となるが、今回の全身投与の系では生存期間そのものが遺伝子導入効果の評価対象となるため、引き続きベクターの構築を再検討し、Mecp2遺伝子そのものの導入により生存期間の延長を目指す。 具体的には、これまでMecp2遺伝子自体のプロモーターをベクターの発現用に用いてきたが、この最小プロモーターは本来のMecp2の発現パターンを維持するものの、プロモーターとしての強度(プロモーター活性)は遺伝子導入ベクターに用いた場合、本来のMecp2発現量を十分再現できるほどのものではないことが示されている。このためより転写活性の強いウイルスプロモーターや別の内在性プロモーターを検討する。 さらに遺伝子導入プロトコールも、より効率的な導入のために複数回投与も検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で学会・研究会等での出張旅費を使用しなかった。また実験補助者の出勤も抑制されたため人件費・謝金の支出も見込みより抑制されたため。
|