研究課題/領域番号 |
20K08225
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
植松 有里佳 (沼田有里佳) 東北大学, 大学病院, 助教 (70735779)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 先天性大脳白質形成不全症 / Pelizaeus-Merzbacher病 / PLP1 / 末梢神経障害 |
研究実績の概要 |
Pelizaeus-Merzbacher病を再現した疾患培養モデルの形態学的評価を行うこと、およびこの疾患培養モデルでの生化学的評価を行うことを第一の目的とし、さらに、末梢神経髄鞘化促進因子のスクリーニングを第二の目的とした。 今年度は、ラットの胎児由来の後根神経節(dorsal root danglia: DRG)を培養し、レンチウイルス を用いてPLP1遺伝子のノックダウンを行うことで得られるPLP1ヌル変異によるPelizaeus-Merzbacher病の末梢神経髄鞘化培養モデルの作成を継続的に行い、安定して作成することが可能になった。しかし、この培養モデルに関する電子顕微鏡による観察は未だ行うことができていない。一方で、DRGの培養を開始して、アスコルビン酸にて髄鞘化を誘導した早期の段階での髄鞘化に関連するタンパク質の発現をウエスタンブロットを用いて検討するために、継時的にサンプリングを行った。また、疾患培養モデルではなく、髄鞘化が観察できる末梢神経の髄鞘化培養モデルを長期的に維持した場合に、髄鞘化に関連するタンパク質の遺伝子発現が最終的にどのように変化するかを観察したところ、髄鞘化を誘導し始めて、2週間までは、MBPやPLP1遺伝子の発現は増加するが、その後低下し、3週間ほどで培養の維持が難しくなることがわかった。 さらに、未知の薬剤で髄鞘化を誘導する薬剤をスクリーニングすることを試みた。候補薬としては、市販されているFDAが認可している159種類の薬剤ライブラリーを用いた。培養を行いながら、目視で髄鞘化観察したが、髄鞘化が誘導されてる薬剤は同定できなかった。既報告では、アスコルビン酸を含めて各種抗酸化作用を有する薬剤が髄鞘化を誘導する候補薬となっていることから、今後は抗酸化剤に絞って濃度の検討も行っていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラットの胎児由来の後根神経節を培養し、レンチウイルス を用いてPLP1遺伝子のノックダウンを行うことによるPelizaeus-Merzbacher病の疾患培養モデルを用いている。髄鞘化を誘導した早期の段階での髄鞘化に関連するタンパク質の発現をウエスタンブロットを用いてみるために、継時的にサンプリングを行った。この髄鞘化培養モデルにおいて、髄鞘化の誘導を開始してから、長期培養を行い、髄鞘化に関連するタンパク質の遺伝子発現が最終的にどのように変化するのかを明らかにすることができた。また、末梢神経の髄鞘化を誘導する薬剤に関しては、FDAで認可されている159種類の薬剤ライブラリーを用いて、スクリーニングを行った。しかし、Pelizaeus-Merzbacher病の疾患培養モデルの形態学的な観察として、電子顕微鏡を用いて、どのような障害が見出されるのかということは未だ明らかにできていない状況にあり、やや遅れていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
末梢神経の髄鞘化を誘導した早期の段階での髄鞘化に関連するタンパク質の発現をウエスタンブロットを用いてみるために、継時的にサンプリングを行った。この解析を進め、タンパク質の発現変化について明らかにしていく予定である。さらにこの培養モデルに関しては、電子顕微鏡による形態学的観察を行うことは非常に重要であることから、こちらも進めていく予定である。髄鞘関連タンパク質の遺伝子発現に関しては、アスコルビン酸による髄鞘化の誘導後2週間までの発現上昇が認められることが明らかにできたので、その時点を目処にして、疾患培養モデルにおいても、髄鞘化に関連する遺伝子の発現変化を解析していきたいと考えている。 末梢神経の髄鞘化を誘導する薬剤に関しては、FDAに認可されている薬剤を用いたが、明らかに誘導できる薬剤を同定できなかった。このため、従来から髄鞘化に関連すると報告のある、抗酸化薬に絞り、濃度の検討なども含めて詳細な検討を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度疾患培養モデルの形態学的観察などが行えなかったため、物品費などの使用が通常よりも少なかったことから、次年度に使用したいと考えている。
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