研究課題/領域番号 |
20K08226
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
和田 泰三 金沢大学, 医学系, 教授 (30313646)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | IL-18 / 原発性免疫不全症 / 自己炎症性疾患 |
研究実績の概要 |
本研究は、血中IL-18の異常高値で特徴付けられる疾患群の病態解明とIL-18を標的とした治療法の開発を目的とする。IL-18は、インフラマゾームの活性化に伴い、細胞内に存在するpro-IL-18が活性型カスパーゼ1によって切断されて、細胞外に分泌される。全身型若年性特発性関節炎、成人発症スティル病などのリウマチ性疾患、XIAP欠損症などの原発性免疫不全症、NLRC4異常症、家族性地中海熱(FMF)などの自己炎症性疾患で、血中IL-18が上昇することが知られている。本年度は、FMFにおけるIL-18高値の病態を解析した。FMFは、発熱、漿膜炎に伴う腹痛や胸痛などの症状を周期的に繰り返すことを特徴とする自己炎症性疾患である。MEFV遺伝子異常により、その遺伝子産物pyrinの機能異常が引き起こされ、炎症制御機構が破綻し発症すると考えられている。FMFは常染色体劣性遺伝形式をとり、典型例ではMEFV遺伝子exon10に変異を認める場合が多い。我が国では、exon10のホモ接合性や複合ヘテロ接合性変異を有するFMF患者は極めて少なく、exon10ヘテロ変異とexon2に存在するE148Qバリアントとの組み合わせで発症する場合が多い。しかし、E148Q自体は日本人の22.4%に認められ、病的意義を有さない多型と考えられている。我々は、血中IL-18濃度やFMF発症にE148Qがどのように影響しているかを解析した。その結果、exon10ヘテロ変異のみでは、FMFを発症する場合は少なく血中IL-18も低値で、exon10ヘテロ変異にE148Qバリアントが加わった場合にFMFを発症することが多く、血中IL-18も高値となることが明らかにされた。これらの知見は、FMFの病態解明に寄与すると同時に、FMF患者や家族の遺伝カウンセリングに有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、血中IL-18の異常高値を示す疾患群の病態を解明することで、それらの疾患においてIL-18を標的とした治療が可能かどうかを検討し、臨床に役立てていくことを目的としている。さまざまな疾患で血中IL-18が異常高値を示すが、現在までに、家族性地中海熱において、責任遺伝子解析、サイトカインプロファイル解析等を解析し、家族性地中海熱の病態と血中IL-18高値の関係性について、Pediatr Int誌に報告した。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、血中IL-18の異常高値を特徴とする疾患群の同定および解析を行う。当科は全国の施設より難治性炎症性疾患のサイトカイン解析を依頼されることが多く、血中IL-18の異常高値を認める症例のスクリーニングを継続する。全身型若年性特発性関節炎やXIAP欠損症等をモデルに、IL-18異常産生の機序や病態との関連を検討する。具体的には、IL-18の異常産生が患者単球/マクロファージを中心に行われているか否かを、患者末梢血単核球もしくは単離した単球を用いて、LPSとATPなどのインフラマゾーム活性化剤の組合せで刺激し、上清中のサイトカインをELISA法で測定、IL-18やIL-1βの産生能を検討する。さらに、IL-18BPと結合していないフリーIL-18の測定を行う。IL-18の生理活性は、生理的抑制因子であるIL-18BPとのバランスで決まり、IL-18BPと結合していないフリーIL-18が活性をもつ。血中IL-18とIL-18BPを同時にELISA法にて測定することで、フリーIL-18を定量する。各疾患において血球貪食症候群併発時など臨床症状と全IL-18/IL-18BP/フリーIL-18の関係性を明らかにする。
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