研究課題/領域番号 |
20K08228
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
城所 博之 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (20647466)
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研究分担者 |
多賀 厳太郎 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (00272477)
夏目 淳 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (60422771)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サブプレートニューロン / 早産児 / 脳波 / デルタブラッシュ / 近赤外分光法 / 安静時ネットワーク / 自発的活動 / 睡眠ステート |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒト早産児を対象に、1)脳波と機能的近赤外分光法(fNIRS)の同時記録を多チャンネルで行い、サブプレート・ニューロンの神経活動に応答する脳血流反応を明らかにすることである。さらに、2) サブプレート・ニューロンの活動動態が、将来の脳構造や脳機能、神経ネットワーク形成に及ぼす影響を明らかにすることである。本研究は、げっ歯類の実験から導かれた仮説である「サブプレート・ニューロンが胎生期の脳発達や神経ネットワーク構築に重要な役割を果たす」ことをヒトで実証する意義がある。 令和3年度は、令和2年度に引き続き、名古屋大学医学部附属病院における在胎22~32週の早産児で、研究参加に同意が得られた早産児28例に対し、安静睡眠時に約60分の脳波-fNIRS同時記録をNICU内あるいは脳波室で施行した。記録は修正30週~44週まで反復して行い、各症例で1~4記録(合計79記録)を行った。得られた脳波データを用い、睡眠覚醒あるいは動睡眠と静睡眠の各ステート分類を視察的に行い、NIRSデータとの関係を検討した。その結果、動睡眠では静睡眠と比較し、NIRSが捉える安静時ネットワークのチャネル間同期性が高値となることを明らかにした。このことは、安静時ネットワークが睡眠ステージで異なる可能性を強く示唆する重要な成果であり、症例数を増やすことでより強固なエビデンスを得ることができた。さらに、安静時ネットワークが在胎週数が増すにつれて発達的に変化することが示唆された。 加えて、脳波上に観察されるデルタブラッシュを自動検出するアルゴリズムの開発を進め、プロトタイプとなるアルゴリズムの開発を行った。令和4年度は、これを用いて、NIRS情報との対応を検討し、目的となるサブプレートニューロンの神経活動に応答する脳血流反応を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初見込まれた研究対象者の数を大きく上回るペースで脳波-機能的NIRSの測定を施行できており、脳波やNIRSのデータ解析も順調に進行中である。次年度も引き続き、研究対象者のリクルートを行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、早産児脳波からデルタブラッシュを検出するアルゴリズムのブラッシュアップ検を進める。早産児に対する脳波-機能的NIRSの記録は令和4年度も引き続き行い、データを収集する。さらに、対象の早産児を前方視的に追跡し、名古屋大学医学部附属病院にある3テスラ高磁場MRIを用いて、18か月で三次元脳構造MRI画像及び安静時機能的MRIを撮像する。解析には専用のソフトウエア(MATLAB,SPM,Carretなど)を使用し、脳構造画像からは、大脳皮質容量、皮質厚、脳表面積や脳回指数などを計測する。安静時機能的MRIからは、脳内ネットワークの解析を、独立成分分析法、グラフ理論、クラスター解析を用いて行う。 また、修正18か月に当院発達外来で神経学的評価及び行動発達評価を行う。小児神経専門医が包括的な神経学的評価を行う。発達検査は、臨床心理士がBayleyⅢ発達評価とM-chatを含む自閉症スクリーニングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度も、新型コロナ感染症の拡大の影響から、国際学会や国内学会への参加、情報取集をする機会がなかったため、次年度に繰り越すことにした。令和4年度は、研究補助員を増やし、さらに収集したデータの管理や解析を重点的に行う予定である。
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