研究実績の概要 |
近年、少量のLPS等に暴露することで自然免疫系を活性化させ、感染防御効果を誘導するTrained Immunity(TI)の概念が注目されている。一方、免疫応答が未熟な新生児敗血症においてはTIの効果は明らかではない。 本研究の目的は、非致死量の糞便懸濁液(Cecal slurry, CS)を予め投与してTIを誘導した新生仔マウスに致死的敗血症を誘導して、TIの保護効果を検討すること。 本年度はまず、成獣マウスから摘出した虫垂内容物を15%glycerol-PBSに溶解してCS(100mg/mL)を作成し、-80℃で保存した。予備的検討で、異なる用量(0.5, 1.0, 1.5, 2.0mg/g)のCS保存液を腹腔内投与した場合の7日齢マウスの死亡率は、各々0, 61, 83, 100%であったことから、日齢3に0.5mg/g CS(非致死量,TI群)または生食(Veh群)を前投与し、72時間後(7日齢)にCS 1.5mg/g(LD83)を投与し、敗血症誘導6時間後の肝臓免疫関連遺伝子発現、9時間後の肝臓酸化ストレスおよび血中細菌数、7日間生存率を検討した。 結果は、2群間において肝臓酸化ストレス(TI:74.6±16.1 vs. Veh:63.4±13.0 U.CARR, p=0.26)に差を認めない一方、TI群において血中細菌数が有意に低値であった(TI:1.7±2.0x103 vs. Veh:2.6±0.6x104 CFU/ml, p<0.05)。また、TI群において7日間生存率(TI:94% vs. Veh:10%, p<0.05, 各群n≧10)が有意に改善した。 TI群において明らかな生存率の改善を認めたことから、本モデルにおいてもTIの敗血症保護効果を確認することができた。
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