研究実績の概要 |
近年、少量のLPS等に暴露させ自然免疫系を活性化させ、感染防御効果を誘導するTrained Immunity(TI)の概念が注目されている。本研究の目的は、非致死量の糞便懸濁液(Cecal slurry, CS)を予め投与してTIを誘導した新生仔マウスに致死的敗血症を誘導して、TIの保護効果を検討することである。 本年度は、日齢3に0.5mg/g CS(非致死量, PTx群)または生食(Veh群)を前投与し、72時間後(7日齢)にCS 1.5mg/g(LD83)を投与し、敗血症誘導3, 6時間後の肝臓免疫関連遺伝子発現・炎症性脂質メディエーター発現を検討した。 肝臓PCRアレイ結果については、PTx群をVeh群と比較した場合は、敗血症誘導6時間後にPTx群において免疫関連遺伝子5種(Cd14, C5aR1, IL-1r1, Mx1, Irf7)の有意な発現抑制を認めた(fold change>4.0, p<0.05)。 敗血症誘導後の肝臓脂質メディエーター動態は、PTx群においてVeh群と比較し、敗血症誘導3時間後にアラキドン酸(AA)由来LM(15deoxy-d12,14 PGJ2)が有意に減少しており、敗血症誘導6時間後にエイコサペンタエン酸(EPA)由来LM4種(12-HEPE, 15-HEPE, 18-HEPE, EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)由来LM5種(4-HDHA, 7-HDHA, 14-HDHA, 17-HDHA, DHA)、AA由来LM4種(5-HETE, 12-HETE, 15-HETE, AA)が有意に低下していた。 以上の結果より、軽微な先行感染は敗血症誘導6時間後の肝臓免疫関連遺伝子および炎症性脂質メディエーター発現を抑制することが明らかとなった。現時点では、本モデルにおけるTIの保護効果は、異常な全身性炎症反応の制御を介したものと考えている。
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