研究課題
我々は、糞便懸濁液(Cecal slurry, CS)を腹腔内投与し敗血症を誘導する新生仔マウス敗血症モデルにおいて、非致死量CS投与による軽微な先行感染(4日齢)が、その後の致死的敗血症(7日齢)に対して保護効果を有することを報告した (JCM,2021)。本年度は、本モデルを更に詳細に検討した。検討1) 4日齢マウスに0.5㎎/g CS(非致死量,先行感染群)または生食(対照群)を投与し、72時間後(7日齢)に 1.5mg/g CS(致死量)を投与し、敗血症誘導6時間後にCBCを測定した。検討2) 4日齢と7日齢で異なるソースから作成したCSを投与し、生存率を検討した。検討3)敗血症誘導を3日後(7日齢)から、1週後(11日齢)、2週後(18日齢)とし、生存率を検討した。検討4) 前回の検討で有意な発現抑制(-95倍)を認めたCD14の働きを解明する目的で、抗CD14抗体5μg/g(抗CD14群)またはIgG 5μg/g(対照群)を4日齢に先行投与し、7日齢に敗血症を誘導し、5日間生存率を比較した。結果は、1)先行感染群で、有意に白血球数、リンパ球数、Hb値が低く、血小板数が高かった。2) 異なるCSソースを用いても保護効果は保たれていた(91% or 62% vs. 0%、p<0.05)。3)1週間後(71%vs.18%、p<0.01)、2週間後(82%vs.0%、p<0.001)も保護効果は保たれていた。4)抗CD14投与群と対照群の生存率に差はなかった(11% vs. 25%, p>0.05)。以上より、軽微な先行感染の保護効果は、CSの種類を問わず、効果は2週間持続するが、CD14抑制のみによるものではなかった。
2: おおむね順調に進展している
本年度の追加検討により、軽微な先行感染の保護効果は、CSの種類を問わず、効果は2週間持続するが、CD14抑制のみによるものではなかったことが明らかになった。
現時点で、新生児敗血症におけるTrained immunityを制御する単一分子マーカーの同定には至っていない。今後は、軽微な先行感染の期間・程度を調整することで、病像に影響を及ぼすかについても検討していく予定である。
COVID-19 pandemicの影響により、動物実験の実施が一時的に停滞した。また、参加予定であった国際学会等への参加が困難であった。今年度は、成果発表を含め平時の研究活動に復帰し、当初の計画に則り支出する予定である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)
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