研究実績の概要 |
我々は本研究において、糞便懸濁液(Cecal slurry, CS)を腹腔内投与し敗血症を誘導する新生仔マウス敗血症モデルにおいて、非致死量CS投与による軽微な先行感染(4日齢)が、その後の致死的敗血症(7日齢)に対して保護効果を有することを報告した (Nakasone R, et al. J Clin Med, 2021)。 また、その後の研究において、この軽微な先行感染の保護効果は、CSの種類を問わず(初回と2回目投与において異なるCSを用いた場合も)、効果は2週間持続する(初回と2回目投与の間隔を2週間まで延長した場合も)ことを明らかにした。 今回は、新生児敗血症における軽微な先行感染の保護効果の機序を明らかにする目的で、成獣においても同様の敗血症保護効果が得られるのかを検討した。 方法は、成獣マウスから摘出した虫垂内容物を15%glycerol-PBSに溶 解してCS(100mg/mL)を作成し,-80°Cで保存した。CS 100μL(TI 群,n=10)または生食 100μL(Veh群,n=8)を前投与し、その72時間 後にCS 300μL(致死量)を投与し、体重変化率、7日間生存率を検討した。 結果は、CS 100μLまたは生食 100μLの前投与では全例72時間生存しており、平均体重変化率は24時間後(TI群:-10.7% vs. Veh群:-1.5%)、48時 間後(TI群:-11.6% vs. Veh群:-1.2%)、72時間後(TI群:-7.8% vs. Veh群:+2.3%)であった。ついで、CS 300 μLを腹腔内投与したところ、TI群は全例生存した一方、Veh群は全例死亡した(100% vs. 0%, p<0.001)。 結論として、軽微な先行感染の敗血症保護効果は、新生仔マウス特有ではなく、成獣マウスにおいても認められた。
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