研究課題/領域番号 |
20K08230
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
樅木 勝巳 岡山大学, 自然生命科学研究支援センター, 教授 (70304615)
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研究分担者 |
藤原 隆 広島文化学園大学, 看護学部, 教授 (30036496)
平山 晴子 岡山大学, 自然生命科学研究支援センター, 助教 (40635257)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 二分脊椎症 / モデル動物 / 歩行障害 / 病態解析 / 脊髄奇形 / 運動神経細胞 / 知覚伝導路障害 / 神経細胞発生障害 |
研究実績の概要 |
椎弓の欠損を主徴とする非致死性脊髄奇形である二分脊椎症は,椎弓の欠損状態や奇形箇所の脊髄の状態から病形が区分される。本奇形は、椎弓欠損のみに奇形が限局しする潜在性型と椎弓欠損に髄膜あるいは脊髄と髄膜の両方が巻き込まれる嚢胞性型とに区分される。一般に潜在性型は無症状であるが,嚢抱性型は種々の程度の神経障害を示す。これまでの二分脊椎症に関連する研究では,この神経障害の病態は臨床知見に基づいたものがほとんどであり,実験に基づく知見は臨床知見に比べてはるかに少ない。特に、幼若年時に臨床症状を示さず、年齢進行に伴って神経症状を呈する場合がある潜在性型二分脊椎症においては、神経症状の発現に至る病態については不明な点が未だ多く残されている。 我々はこれまでに二分脊椎症で見られる神経障害の病態を詳細に解析することを目的として,ヒト二分脊椎症患者に似た後肢運動障害を示す二分脊椎モデル動物を開発し,奇形領域の神経細胞の発生異常や神経伝導路形成異常が二分脊椎症で併発することが多い歩行障害を誘発する可能性を示してきた。すなわち、本モデルは、人為的に二分脊椎を引き起こすことから本奇形の病態解析に有用なモデル動物の可能性を示した。 既報では二分脊椎症モデル動物が示す二分脊椎症の病型は、嚢胞型ではあるが最も重症例である脊椎裂に類似したものであり、ヒトにおいて最も発症例が多い病型を示さないという。一方、これまでに我々は、提示したモデルにおいて脊椎裂ではない嚢胞型や潜在型の病型を示すことを示し、モデル動物として高いポテンシャルを有することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度は、前年度から引き続きCOVID-19の蔓延に伴う機関内対策に加え、岡山香川地域で発生した高病原性鳥インフルエンザの蔓延等があって長期間保存したサンプルを用い実験を実施するなどの対策を行った。一方、共同研究者とオンサイトでの作業が滞ったことから、一部、当初計画に比べるとわずかに研究の進捗の遅延が認められる。一方、現在の研究の当初計画で実施予定の脊椎裂モデルを用いた解析に加え、新たに作出することができるようになり、同時並行でこれらの解析を行っていることから、ヒト二分脊椎症の病態を把握するための基礎データを収集するという本研究の命題から鑑みると本研究はおおむね順調に推移していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで計画では、脊髄裂タイプの奇形をもつ二分脊椎ヒヨコで実施予定であったが、このタイプに加え、過去の研究で作出可能となった嚢胞型タイプでの実験も加える。これにより本研究計画によって得られるデータのヒトへの外挿化をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度も前年度に引き続きコロナ対策のために打ち合わせ旅費等の執行が抑制された。また、前年度に発注したモノクローナル抗体精製キットがメーカーで欠品となっており、止む得ず年度をまたいでの商品の手配及び納品となったために次年度使用額がプラスとなった。上記の消耗品については、発注手配を継続しているので、当該経費を次年度に追加し、研究を進めたい。
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