帝王切開で出生した新生児の腸内細菌叢は、経腟分娩で出生した新生児の腸内細菌叢と異なる。そして、大規模な出生コホート研究から、帝王切開での出生が、肥満・アレルギー疾患・糖尿病などの発症リスクになることも示されてきた。そして、我々は近年、出生した新生児が、母体の腸内細菌叢を継承し、正常な腸内細菌叢を確立するためには、出生時の口腔内液が重要であることを証明した。 そこで、腸内細菌叢に対して負の影響を及ぼす帝王切開で出生予定の新生児に対して、出生直後から新生児の口腔内にビフィズス菌を投与し、正常な腸内細菌叢を誘導する研究を計画した。単施設の産科施設に協力を依頼し、ランダム化二重盲検並行群間比較試験を実施した。産科にて予定帝王切開が予定されている妊娠女性に対してリクルートを行い、妊娠36週時点の胎児の推定体重をもとに層別置換ブロック法を用いてランダム化し、プロバイオティクス食品およびプラセボ食品(賦形剤デキストリン)の二重盲検での割り付けを行い、症例登録された母体から出生した新生児に対して割付け食品を出生直後と日齢1・2に内服させ、産科退院時に採便、採尿を行い、専用容器で冷凍保存した。また、1か月時および3か月時に栄養調査および採便、採尿を同様に行い、専用容器で冷凍保存した。 59名の新生児がエントリーし、生後の試験食品の内服が行われた。1か月時の検体回収は57名、3か月時は47名から回収できた。現在、16SrRNAシーケンスによる腸内細菌叢解析、Quantitative PCRによるビフィズス菌数や投与菌の定量解析、便メタボローム解析を解析中である。すべての結果が出そろった後、症例固定を行い、キーオープンし、統計解析を実施する予定である。
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