研究課題/領域番号 |
20K08239
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
森岡 一朗 日本大学, 医学部, 教授 (80437467)
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研究分担者 |
菅野 仁 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70221207)
谷ヶ崎 博 日本大学, 医学部, 准教授 (90378141)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 赤血球 / 新生児 / 臍帯血 / 早産児 / 成人 |
研究実績の概要 |
先天性溶血性貧血の約半数が重症新生児黄疸として発症するが、生後3か月以内は赤血球形態異常、赤血球造血の変化があるため診断が難しい。そこで、2020年度に赤血球の生化学的特徴である定量的赤血球浸透圧脆弱性試験(FCM-OF)とEMA結合能を、フローサイトメトリーを用いて臍帯血の定量的FCM-OFとEMA結合能を確立した。臍帯血と成人血を比較したところ、臍帯血赤血球は成人赤血球に比して浸透圧抵抗が増大していること、膜表面積が小さいことを明らかにした(投稿準備中)。 2021年度は、さらに研究を進め、帝王切開で出生した新生児55名(正期産児41名、早産児14名 [27週6日~36週5日])について、同意を取得した。検体は児が出生後の臍帯血であり、有害事象は認めていない。上記検体で赤血球膜異常症のスクリーニングになるフローサイトメーターを用いた定量的FCM-OFとEMA結合能の検査を行い、基準値作成を行った。生後1か月健診時まで経過観察を行い、先天性溶血性貧血の疑われた児や母乳性黄疸以外の遷延性黄疸を認めた児はいなかった。現状では正期産児と早産児の間に明らかな差は認めていないため、在胎週による違いはない可能性がある。しかし、超早産児については今後更なる検討が必要である。 我々の定量的FCM-OFとEMA結合能の検査を用いて、遺伝性球状赤血球症と迅速に診断した新生児1名(早発黄疸のため日齢1に新生児搬送。上記検査を行い、新生児基準と比較して遺伝性球状赤血球症と診断した。日齢2に交換輸血となっている)と先天性TTPと迅速診断した新生児1名(日齢1に溶血性貧血と血小板減少を認め、血漿交換前にスクリーニングとして上記検査を行った。膜異常症は否定的な検査結果であり、その他の疾患の鑑別を進め、診断を迅速に行うことができた)に対し臨床応用できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先天性溶血性貧血の約半数が重症新生児黄疸として発症するが、生後3か月以内は赤血球形態異常、赤血球造血の変化があるため診断が難しい。そのため、赤血球の生化学的特徴である定量的赤血球浸透圧脆弱性試験(FCM-OF)とEMA結合能が重要であるが今までそのデータがなかった。赤血球の生化学的特徴を明らかにするためのFCM-OFとEMA結合能の系が確立できた。先天性溶血性貧血が疑われる場合(児の両親の先天性溶血性貧血の既往歴・家族歴、胎児腹水の存在)、臍帯血赤血球を用いて上記検査を実施することにより、重症黄疸のリスク予測、先天性溶血性貧血の早期診断が期待できると考えていたが、実際に2名の迅速診断につながった。これは今までにないものであり、本研究の目的である早産児の生化学的特徴の解明に向けての大きな成果である。 続いて、来年度は、引き続き、早産児の特徴を明らかにするために、出生時在胎週によって違いがあるかを明らかにすれば、本研究の目的の1つに到達できる。もし、違いがあるならば、修正週数別に層別された基準値の作成を目指す。赤血球代謝については、他の検査で用いた血液の残りを白血球除去処理し、packed cellに等量のグリセロール/ソルビトール混合液を加えて-80℃で保存し、準備を進めている。 遷延性重症黄疸感受性遺伝子の同定についても検討を進めている。遷延性重症黄疸を発症し、前述の赤血球検査で異常がある場合は、次世代シークエンサーを用いて、赤血球膜・酵素・ヘモグロビン関連74遺伝子パネルでターゲット遺伝子解析を行っている。遷延性重症黄疸を発症したが、前述の赤血球検査で異常がない場合は、次世代シークエンサーで約4800の疾患感受性遺伝子の網羅的遺伝子変異解析を行い、サンガー法で遺伝子変異を確定している(成果の一部は日本人類遺伝学会第66回大会で発表した)。
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今後の研究の推進方策 |
先天性溶血性貧血の約半数が重症新生児黄疸として発症するが、生後3か月以内は赤血球形態異常、赤血球造血の変化があるため診断が難しい。それを解決するための、定量的赤血球浸透圧脆弱性試験(FCM-OF)の系が確立できた。今後さらに、新生児の中で在胎週による違いがないか検証し、在胎週別の基準値の設定が必要かを明らかにする。在胎週別の基準値が必要となれば、作成にとりかかる。先天性溶血性貧血が疑われる場合(児の両親の先天性溶血性貧血の既往歴・家族歴、胎児腹水の存在)、臍帯血赤血球を用いて上記検査を実施することにより、実心療での臨床応用や迅速診断を引き続き行っていく。 赤血球代謝については、他の検査で用いた血液の残りを白血球除去処理し、packed cellに等量のグリセロール/ソルビトール混合液を加えて-80℃で保存し、準備を進めている。早産児の赤血球の生化学的特徴を明らかにする目標に向かって進めていく。 遷延性重症黄疸感受性遺伝子の同定についても検討を進めている。遷延性重症黄疸を発症し、前述の赤血球検査で異常がある場合は、次世代シークエンサーを用いて、赤血球膜・酵素・ヘモグロビン関連74遺伝子パネルでターゲット遺伝子解析を行っている。遷延性重症黄疸を発症したが、前述の赤血球検査で異常がない場合は、次世代シークエンサーで約4800の疾患感受性遺伝子の網羅的遺伝子変異解析を行い、サンガー法で遺伝子変異を確定している。また、代謝・排泄・トランスポーター関連225遺伝子(1936多型)チップを用いた網羅的遺伝子多型解析についても検討する。
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