研究実績の概要 |
申請者らは、川崎病(Kawasaki disease, KD)急性期において、末梢血好中球は増加するとともに機能的にも活性化されてelastase等を過剰に産生して血管炎の病態に深く関与していることを報告してきた。最近では、科研費基盤研究(C)16K10082, 2016~2020年)において、KD急性期において好中球細胞外トラップ(NETs)形成(NETosis)が亢進していることを見出した(Pediatric Research, 2020, 87:998-1004;https:doi・org/10.1038/S41390-019-0710-3)。 近年、好中球にもいくつかのサブセットがあることが判明しているが、機能的には不明な点が多い。好中球サブセットマーカーとされるolfactomedine 4(OLFM4)やCD177の発現の増強や低比重好中球数の増加は、重症感染症や自己免疫疾患の予後や血管内皮細胞傷害に関連すると報告されている。そこで、本研究では「KDにおける好中球サブセットの動態を解析することによってその機能的意義を解明し、KDの重症度予測に応用する」ことを目的とする。 まず最初に、KD末梢血の好中球を分離して、OLFM4とCD177のmAbで2重染色を行った。好中球サブセットのOLFM4陽性CD177陽性細胞は、KD急性期のIVIG治療前に増加して、亜急性期のIVIG後から回復期にかけて次第に減少する傾向を示した(未発表データ)。従って、「KD急性期では好中球サブセットの分布がダイナミックに変動する」可能性があると考える。
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