研究課題/領域番号 |
20K08250
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宗形 光敏 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (30312573)
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研究分担者 |
佐藤 恭弘 帝京大学, 医学部, 助教 (00750241)
鈴木 亮 帝京大学, 薬学部, 教授 (90384784)
児玉 浩子 帝京平成大学, 未登録, 特任教授 (00093386) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Mekenkes病 / macular mouse / 銅錯体 |
研究実績の概要 |
Menkes病(Menkes Diesease; MD)は、銅輸送蛋白ATP7Aの遺伝子異常によるX染色体劣性遺伝性疾患である。この病態ではATP7Aの機能低下により消化管上皮から吸収された銅が上皮細胞内に蓄積したまま体内へ移行できない。これにより、MD患者は銅欠乏による重篤な中枢神経障害をきたし、幼児期に死亡する。そこでMD患者の治療薬としてATP7Aを介さずに銅のゴルジ体膜通過を可能にし、脳を含む体内組織へ銅を送達する銅製剤の開発が必要とされている。 これまで我々はMDモデルマウス(macularマウス)を用いた研究から、この難病の治療薬として2種の経口投与可能な化合物、すなわちDisulfiram(以下DSF)とglyoxal-bis(N(4)-methylthiosemicarbazonato)-copper(II)(以下CuGTSM)を見出した。DSFは分子内に銅を含まないが、消化管管腔内や消化管内皮に存在する銅と錯体を形成し、その脂溶性により脳に集積する。しかしDSFは極めて難溶であるため、当初経口投与時の効果は不十分かつ安定しなかった。そこで無害な溶媒を検索し、特定の油脂に良く溶けることがわかった。この油脂にDSFを溶解して経口投与したところ薬効が向上し、macularマウスを安定して生存させることができた。一方で類似の化合物で軸索の形成を抑制するとの報告がなされ、DSFが同様の作用を持たないか新たに検証する必要が生じた。 一方CuGTSMは脂溶性の高い銅の錯体であり、塩化銅の皮下注射をしなくともCuGTSM経口投与のみで一定数のmacularマウスが生存する。その静脈採血により薬物動態を計測すると正常マウスにくらべ分解速度が高く、効率よく脳に到達していない可能性がある。分子内側鎖修飾により分解速度を遅延できる可能性があり、今後の検討課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
macularマウスは長期にわたり継代を繰り返しているため産仔数が少なく、また新型コロナ流行の影響でmacular mouseの飼育コロニーを縮小したため、実験に必要な動物の匹数得られなかった。また、新たに検討しなければ成らない課題が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
macularマウスの飼育スペースを拡張し、外部コロニーから動物を加えることで産仔数を増やす。 検討中の2群の化合物の検討を進めるなかで明らかになった課題を検討する必要がある。すなわち、DSFについては類似化合物で報告されている軸索形成の阻害がDSFを投与したmacularマウスでも生じるか、生じるとすればそれを回避する濃度閾値を設定できるか検証する。 またCuGTSMについてはMenkes病病態下のマウスにおいて肝での代謝速度が亢進している点について、CuGTSMの側鎖を修飾し肝臓での代謝を送らせることで、体循環への移行量、ひいては脳への移行量を増やせるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
macularマウスは長期にわたり継代を繰り返しているため産仔数が減少していることに加え、新型コロナ流行の影響でmacular mouseの飼育規模を縮小したため、実験に必要な動物の匹数が得られなかった。さらに検討の中で新たに検証しなければならない課題が生じたため、これを次年度で検討する。 そのため病態動物の飼育スペースを次年度も確保、拡張し、繁殖を継続するための費用が生じる。また昨年度実施できなかった実験と新たな問題点を検証するための追加実験を行うための試薬、消耗品の購入が必要である。
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