研究課題/領域番号 |
20K08251
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
今川 和生 筑波大学, 医学医療系, 講師 (40708509)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 小児 / 急性肝炎 / 急性肝不全 |
研究実績の概要 |
今年度は中核となる解析方法の基盤構築と次年度への課題を見出すことを念頭に研究を進めた。昨年に引き続き、小児肝疾患の診断支援と診療協力体制を継続した。ゲノムDNA、血清、尿、肝生検などの生体試料を収集し、原因不明の肝疾患に対して網羅的ゲノム解析やRNAseq、メタボローム解析など分子レベルでの異常有無について評価した。小児期発症の急性肝炎において、これらの解析で特異的診断が得られないケースも多く、今後の課題と思われた。急性肝炎の病態では原因となるウイルス感染症や背景となる遺伝性疾患が明らかとならないetiology不明例が多い。これらの一部で末梢血のフローサイトメーターで解析するとTリンパ球が過剰に活性化していることを見出した。このような免疫の過剰な応答性を示す宿主因子の有無はゲノム解析により新たな知見が得られると考え、次年度に解析を行う予定である。一方で、既存の病態に照合して適合する疾患群があるかどうか慎重に検討を進める。また、前年度まで取り組んできた遺伝性胆汁うっ滞症のゲノム解析を引き続き実施した。国内外の共同研究者から収集したゲノム検体を解析し、Alagille syndrome、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、NICCD(Neonatal intrahepatic cholestasis caused by citrin deficiency)、ARC(Arthrogryposis, renal dysfunction, and cholestasis)syndromeなどを診断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年まで進めていた小児期発症胆汁うっ滞性疾患の解析に加え、急性肝炎を呈する症例の解析も進められている。ゲノム解析や代謝物の解析から分子病態の考察を行うことが本研究の中核であったが、研究を進めていくなかで末梢血中の過剰な免疫活性状態が明らかとなり、免疫異常についても今後の検討課題であることを見出した。当初の研究計画よりも発展性を有するなどおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き症例のエントリーを続けることと試料の解析を行う。ゲノム解析や代謝物の解析だけでなく、免疫動態についても解析し、個々の症例に起きている病態を詳細に把握し、小児における急性肝炎・肝不全の病態把握に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により、計上してあった学会や出張の旅費が余剰となり、次年度使用額になった。これらは消耗品費や解析費に充てる予定である。
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