研究課題/領域番号 |
20K08255
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
藤澤 泰子 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (40402284)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精巣異形成症候群 / DOHaD / 胎生期低栄養環境 / 胎生期低アンドロゲン / 男性不妊 / 酸化ストレス / アポトーシス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、胎生期低栄養に起因するTesticular dysgenesis syndrome(精巣形成不全症候群)のメカニズムを解明することである。 前年度までに、野生型B6マウスによる母獣摂餌制限を行い、出生した雄マウスについて解析し、生後6週の段階で、母獣が自由摂餌であった群(C群)に比べて、母獣が摂餌制限を受けた群(R群)の精子数はC群の70%まで減少していることを明らかにした。 本年度行ったことは2点である。 1. 胎生期テストステロン産生の首座である胎仔ラディッヒ細胞に着目して研究を展開した。胎仔型ライディッヒ細胞特異的にEGFP を発現するトランスジェニックマウス(Ad4BP/SF-1-EGFPマウス)を利用し、胎生期栄養制限マウスモデルの胎仔精巣からセルソーティングによりライディッヒ細胞を単離し、全ゲノムメチル化解析を行った。現在、マイクロアレイによる網羅的遺伝子解析にて明らかになった遺伝子発現パターンとのオーバーラップの確認をすすめている。 2. 母獣摂餌制限による、雄マウスにおける精子数減少のメカニズムについて調べた。免疫染色にて、HSD3B陽性細胞(=ライディッヒ細胞)、AMH陽性細胞(=セルトリ細胞)、DDX4陽性細胞(=胚細胞)、PNCA陽性細胞(= 増殖細胞)に関しては、C群とR群では差を認めなかったが、アポトーシスしている細胞をTUNEL染色にて評価したところ、有意にR群の精巣にて陽性細胞数が増加していた。 3. 2の精巣における遺伝子発現解析において、酸化ストレス関連遺伝子の発現上昇が確認された。一方、抗アポトーシスに関連する遺伝子の発現上昇およびアポトーシス促進遺伝子の発言低下が確認された。このことから、酸化ストレス増強が精巣におけるアポトーシス増強に関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、胎生期低栄養に起因するTesticular dysgenesis syndrome(精巣形成不全症候群)のメカニズムを解明することである。 これまで、マウスにおいて、胎生期低栄養が胎仔低アンドロゲン状態を作り出すこと、出生後の雄マウスでは精子数の低下が観察され、その背景としての精巣における酸化ストレス増強によるアポトーシスの惹起の可能性を提示することができた。 ここまでの成果は、英語論文 Intrauterine Hyponutrition Reduces Fetal Testosterone Production and Postnatal Sperm Count in the Mouse Journal of the Endocrine Society, Volume 6, Issue 4, April 2022, https://doi.org/10.1210/jendso/bvac022 として報告した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、胎仔ライディッヒ 細胞における全ゲノムメチル化解析とマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析にて明らかになった遺伝子発現パターンとのオーバーラップを確認していく。 さらに、本研究の発展として、性分化に関して脆弱な遺伝的背景をもつ遺伝子改変マウスを用いた、母体低栄養実験を行い、環境因子と遺伝因子との相互効果に関する検討を行う予定であり、現在は準備実験を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、マウスの飼育が終了しており、データの解析が中心であった。さらに遺伝的解析、免疫染色などは、他のプロジェクトにて購入した物品と共通するものもあったため予算計上した額よりも少額の使用となった。本年度後半より遺伝子改変マウスの実験を進めており、次年度はさらに飼育数を拡大する予定である。さらに、サンプリング後の解析も多く行う予定であり、次年度使用額として計上した予算を執行する予定である。
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