研究課題
本研究の目的は、胎生期低栄養に起因する男性生殖器系疾患発症のメカニズムを解明することである。野生型B6マウスによる母獣摂餌制限を行い、胎児期に低栄養環境におかれたオスマウスにおいて、胎児精巣でのテストステロン低下と生後6週での精子数の減少を明らかにした。本年度行ったことは以下である。1. 胎仔ラディッヒ細胞への栄養制限の影響に関する研究を継続した。胎仔型ライディッヒ細胞特異的にEGFP を発現するトランスジェニックマウス(Ad4BP/SF-1-EGFPマウス)を利用し、胎生期栄養制限マウスモデルの胎仔精巣からセルソーティングによりライディッヒ細胞を単離し、全ゲノムメチル化解析を行い、さらにマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析で有意に変動を認めた遺伝子におけるメチル化パターンの解析を進めている。2. 胎児期の低栄養環境と生後の精子数低下との関連について、精巣生殖細胞におけるアポトーシス亢進が明らかになった(TUNNEL染色陽性細胞の増加)。その背景として、酸化ストレス亢進の関与が考えられたため(遺伝子発現パターン)、酸化ストレス関連マーカーの解析等を進めている。3. 胎児期低栄養環境による男性生殖器系疾患発症が、遺伝的背景により促進されるかどうかを検証するために、性分化疾患モデルマウスであるMamld1 KOマウスを用いた母獣摂餌制限実験を進めている。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究成果により英語論文を発表した(Intrauterine Hyponutrition Reduces Fetal Testosterone Production and Postnatal Sperm Count in the Mouse. J Endocr Soc. 15;6(4), 2022)。さらに以下の研究を進めている。1胎児ライディッヒ細胞のメチローム解析2性分化モデルマウスMamld1 KOマウスを用いた母獣摂餌制限実験3酸化ストレス増強の評価とっそのメカニズムの解明。以上より、研究は概ね順調に進展していると判断できる。
さらなる研究の発展のために、以下の実験準備を行っている。1性分化疾患モデルマウスの実験の展開(Mamld1KOマウスに加えて、Ad4BPKOマウス等)2胎児期低栄養環境とその後の生殖機能を中心とした男性生殖器系の障害のメカニズム解明のためのin vitro実験の確立。具合的には、マウス精巣を用いた精巣再構築培養系による実験系を採用し、実験を開始している。3低栄養環境と細胞内代謝について、細胞フラックスアナライザーによる解析の導入を試みている。
研究代表者の所属研究室では、共通の実験手法を用いた研究が並行して進行しており、研究試薬、キット、消耗品等について共用できるものがあったため、計画していた使用額より少額となったため、次年度使用額が生じた。次年度は委託によるメチローム解析等への使用を計画している。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
J Clin Endocrinol Metab.
巻: Apr 3 ページ: 1-11
10.1210/clinem/dgad187
Journal of the Endocrine Society,
巻: Volume 6, Issue 4, ページ: 1-11
10.1210/jendso/bvac022