研究課題
骨格の石灰化にはカルシウム、無機リン(Pi)、石灰化阻害物質のピロリン酸(PPi)が重要な役割を果たしているが、骨石灰化に関与する分子の全体像は解明されていない。骨局所のPPi濃度、Pi/PPi比は明らかではなく、骨石灰化の程度を反映するバイオマーカーや遺伝子発現プロファイルは存在しない。本研究では、骨石灰化に適切なPPi濃度、Pi/PPi比、骨石灰化関連新規物質、骨石灰化を反映する遺伝子発現プロファイルを明らかにする。ヒト骨髄由来間葉系幹細胞を骨芽細胞分化培地を用いて培養したところ、骨芽細胞分化マーカーや石灰化関与分子マーカーの発現増加が見られ、石灰化も確認された。培養中のPi濃度を一定にするため、分化培地に含まれるβglyceroophosphate(GP)に代わりリン酸ナトリウム(NaPi)も用いた。培養7日目のNaPi培地では、GP培地に比べて骨芽細胞分化マーカーや石灰化関与分子マーカーの発現上昇、石灰化促進、Pi濃度上昇を認めた。リンの骨芽細胞作用の新規シグナル経路を同定するためにRNA sequencingを行った。培養7日目のNaPi培地細胞では、GP培地細胞に比べて、骨芽細胞分化マーカー、Wntシグナル伝達経路構成因子の発現上昇を認めた。蛋白発現は、NaPi培地細胞では、GP群と比較して、非古典的Wntシグナル伝達経路分子の発現が増加したが、古典型Wntシグナル伝達経路分子は増加しなかった。siRNA実験において、NaPi群では上昇していた非古典的Wntシグナル伝達経路分子の発現と骨芽細胞分化が抑制されたが、GP群では抑制されなかった。以上より、Piは、骨芽細胞分化初期に非古典的Wntシグナル経路の発現上昇を介して、骨芽細胞分化・骨形成を促進することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
リン酸により発現上昇する分子を同定し、おおむね順調に進展していると考える。
リン酸によって骨芽細胞分化初期に発現上昇した非古典的Wntシグナル経路分子の発現上昇を介して、骨芽細胞分化・骨形成が促進することが示唆された。非古典的Wntシグナル経路分子の発現抑制や過剰発現によって骨芽細胞分化・骨形成が抑制されたり促進されたりするかを検討する。リン酸による非古典的Wntシグナル経路分子発現上昇の機序を検討する。
若干使用額が予定より下回ったが、おおむね予定通りであった。非古典的Wntシグナル経路分子の発現抑制実験や過剰発現実験を行い、骨芽細胞分化への影響を検討する。遺伝子発現や蛋白発現実験を行い、リン酸による非古典的Wntシグナル経路分子発現上昇の機序を検討する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件)
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