研究課題/領域番号 |
20K08269
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研究機関 | 地方独立行政法人埼玉県立病院機構埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所) |
研究代表者 |
大平 美紀 地方独立行政法人埼玉県立病院機構埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 臨床腫瘍研究所, 主幹研究員 (20311384)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経芽腫 |
研究実績の概要 |
本研究では、高リスク神経芽腫の分子的背景の解明と、がんゲノム医療における精度の高い神経芽腫リスク分類システムの構築を目指し、高リスク神経芽腫臨床試験登録例95症例について、予後層別化マーカーとなりうるゲノム異常について解析を進めている。令和3年度は昨年度に引き続き、変異解析に加えて、テロメア維持機構のひとつAlternative Lengthening of Telomeres (ALT)の検索と、ゲノムメチル化のマーカーであるCpG island phenotype (CIMP、高CIMPレベルは神経芽腫の予後不良マーカーとして報告されている)の検索を行った。まずALTは全症例の24%に検出され、既報と同様に全てMYCN非増幅例であった。今回解析した高リスク群のみのコホートでは予後に有意差は認めなかった。一方CIMPマーカーについては、高リスク症例群ではほとんどが高い傾向であったが、一部にCIMPが低い症例群があり、長期生存群ばかりでなく、特定の病理像をともなう症例群では非常に予後が悪いことが示された。今後病理組織型を組み合わせた層別化が必要であると考えられた。 また国際神経芽腫リスクグループ(INRG)マーカーと本研究で解析したゲノムマーカーを組み合わせて、過去症例605例における後方視的な予後因子解析も行った。INRGマーカーと共にゲノムコピー異常のパターンも予後によく相関し、1p lossと11q lossが共存するpartial chromosomal alterationタイプは非常に予後不良であること、コピー数のbreakpointの数も多くなるほど予後不良であることを確認した。多変量解析から、MYCN非増幅のstage 4症例では、年齢18ヶ月以上、血清LDH値、breakpoint >7が強力な予後因子として有用であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り、過去症例やJCCG-JNBSG高リスク神経芽腫臨床試験登録例について、既知リスクマーカーに加えて、本研究で注目しているゲノムマーカー(テロメア維持機構ならびにメチル化マーカーCIMP)についての解析は完了したが、コロナ禍による出勤自粛、試薬調達の遅れなどにより、発現データの解析はやや遅れている。代わりとして、これまでに得られたデータの一部について論文化にエフォートを投入した。
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今後の研究の推進方策 |
ATRX遺伝子異常の解析を完了するとともに、網羅的遺伝子発現データを追加し、令和3年度に追加したALT、CIMPマーカーのデータと、ATRXノックアウト細胞株、EZH2発現導入細胞株、EZH2阻害剤投与細胞株の遺伝子発現signatureのデータを追加して、横断的な解析を行い、ATRX異常が見られた症例群について、治療標的の候補となりうる特徴的な遺伝子群を抽出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた2回の海外学会参加は翌年に延期され、旅費を次年度に回す必要が生じた。また、コロナ禍による出勤自粛、試薬調達の遅れなどにより、発現データの解析は次年度に延期し、論文執筆にエフォートを注いだ。
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