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2022 年度 実施状況報告書

ヒストン修飾異常がもたらすヒト先天異常の多様性と病態解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K08270
研究機関地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所)

研究代表者

黒澤 健司  地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 臨床研究所長 (20277031)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードエピゲノム / ヒストン / Acetyltransferase / KAT6B / 知的障害 / てんかん / 自閉スペクトラム症
研究実績の概要

エピゲノムは初期発生とそれに関連した細胞分化を支える仕組みの一つで、メカニズムとして、DNAのメチル化、ヒストンの修飾、クロマチンリモデリングの3つのプロセスをもつ。本研究では、エピゲノムの先天的な変化と疾患発症との関連解明を目指している。研究2年目までに先天的なエピゲノムの変化が希少疾患の発症にかかわることを明らかにしてきた(Murakami et al., 2020; Shono et al., 2022; Enomoto et al., 2022)。
今年度はhistone acetyltransferaseであるKAT6Bの未報告新規のバリアントをもち、自閉スペクトラム症とてんかんを伴う重度知的障害の症例を報告することができた(Nishimura et al., 2022)。KAT6Bは上述のヒストン修飾因子であるが、バリアントの位置と種類によりさまざまな臨床像を呈する(黒澤 2022)。今回の症例は本来のホットスポット(exon 16-18)より上流で、ミスセンス変異としては最も上流に位置するexon 7の変異であった。KAT6Bはバリアントの位置と種類によって臨床像が大きく変化する。今回のKAT6Bの5’側上流エクソンのミスセンス変異は、優性阻害としての効果が予想され、KAT6Bの機能を検討する上で極めて重要と考えられた。
ヒストン修飾因子のさまざまな発症メカニズムを考えるうえで、重要なエビデンスとなった。今後、さらに症例を手掛かりとして、複雑で多様な表現型とヒストン修飾の変化の関連性を検討し、治療への手掛かりを模索する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

てんかんと自閉スペクトラム症を特徴とする重度知的障害の症例に、ヒストンアセチル化に関わるKAT6Bの新規バリアントを検出し、ヒストン修飾因子の複雑な機能の側面を明らかにすることができた。

今後の研究の推進方策

さまざまな表現型を特徴とする先天異常症例に潜在するヒストン修飾因子の先天的な変化をゲノムないしはトランスクリプトームレベル、あるいは症例によっては全ゲノムシーケンスを併用して、発症メカニズムの全体像を明らかにしてゆく。バリアントの多様性が臨床症状の多様性を規定することがあり、その由来がヒストン修飾因子そのものの機能的な多様性に由来する可能性があるからである。これらを念頭に解析を発展させる予定である。

次年度使用額が生じた理由

一部の解析では、既存解析資材と既存解析試料で当該年度解析を進めることができたため、次年度使用額が生じた。当初計画におけるマイクロアレイ解析やエクソーム解析に加え、ゲノムシーケンスやRNA解析には変更ないので、次年度以降も解析を行うこととした。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Delineation of a Phenotype Caused by a KAT6B Missense Variant Not Resembling Say-Barber-Biesecker-Young-Simpson and Genitopatellar Syndromes.2022

    • 著者名/発表者名
      Nishimura Naoto、Enomoto Yumi、Kumaki Tatsuro、Murakami Hiroaki、Ikeda Azusa、Goto Tomohide、Kurosawa Kenji
    • 雑誌名

      Molecular Syndromology

      巻: 13 ページ: 221~225

    • DOI

      10.1159/000520134

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Novel COL2A1 variants in Japanese patients with spondyloepiphyseal dysplasia congenita2022

    • 著者名/発表者名
      Akahira-Azuma Moe、Enomoto Yumi、Nakamura Naoyuki、Yokoi Takayuki、Minatogawa Mari、Harada Noriaki、Tsurusaki Yoshinori、Kurosawa Kenji
    • 雑誌名

      Human Genome Variation

      巻: 9 ページ: 16

    • DOI

      10.1038/s41439-022-00193-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mosaicism of a Truncating Variant of CASK Causes Congenital Heart Disease and Neurodevelopmental Disorder2022

    • 著者名/発表者名
      Abe-Hatano Chihiro、Yokoi Takayuki、Ida Kazumi、Kurosawa Kenji
    • 雑誌名

      Molecular Syndromology

      巻: 13 ページ: 517~521

    • DOI

      10.1159/000524375

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Complex congenital cardiovascular anomaly in a patient with AGO1‐associated disorder2022

    • 著者名/発表者名
      Takagi Minako、Ono Shin、Kumaki Tatsuro、Nishimura Naoto、Murakami Hiroaki、Enomoto Yumi、Naruto Takuya、Ueda Hideaki、Kurosawa Kenji
    • 雑誌名

      American Journal of Medical Genetics Part A

      巻: 191 ページ: 882~892

    • DOI

      10.1002/ajmg.a.63089

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ヤング・シンプソン症候群2022

    • 著者名/発表者名
      黒澤健司
    • 雑誌名

      遺伝子医学

      巻: 12 ページ: 85-89

  • [雑誌論文] Down症候群・その他の先天異常症候群2022

    • 著者名/発表者名
      黒澤健司
    • 雑誌名

      小児内科

      巻: 54 ページ: 1635-1638

  • [学会発表] マイクロアレイ染色体検査の臨床応用の実際2022

    • 著者名/発表者名
      黒澤健司
    • 学会等名
      第125回日本小児科学会学術集会
  • [学会発表] 小児神経科医が知っておきたい臨床遺伝学ABC2022

    • 著者名/発表者名
      黒澤健司
    • 学会等名
      第64回日本小児神経学会学術集会
  • [学会発表] 難病領域の遺伝学的検査-現状と課題2022

    • 著者名/発表者名
      黒澤健司
    • 学会等名
      第29回日本遺伝子診療学会大会
  • [学会発表] 先天異常の診かた考え方と診断アプローチとしての遺伝学的検査2022

    • 著者名/発表者名
      黒澤健司
    • 学会等名
      第21回Haemostasis研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] マイクロアレイ染色体検査の医療実装と展望2022

    • 著者名/発表者名
      黒澤健司
    • 学会等名
      第67回日本人類遺伝学会
  • [学会発表] 難病遺伝医療における保険診療の道のりと課題2022

    • 著者名/発表者名
      黒澤健司
    • 学会等名
      第67回日本人類遺伝学会

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公開日: 2023-12-25  

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