研究課題/領域番号 |
20K08274
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
鈴木 良地 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (20396550)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パイエル版 / 表皮型脂肪酸結合タンパク質 / マクロファージ / Axl / Gas6 / phosphatidylserine / 貪食 |
研究実績の概要 |
これまでの我々の研究で脂肪酸結合タンパク質のひとつである、表皮型脂肪酸結合タンパク質(Epidermal fatty acid binding protein: EFABP)が主要な腸管粘膜組織であるパイエル板のM細胞、樹状細胞、胚中心マクロファージに発現していることを示した。 最も発現強度の高い胚中心マクロファージはその周囲のphosphatidylserine (PS)を表面に露出したB220(B細胞マーカー)陽性細胞を貪食しており、EFABPとの関係が予想された。 分泌タンパク質であるGas6, 膜タンパク質のAxlからなる複合体はPS特異的な接着装置として機能することが先行研究で示されていた。Gas6,AxlとEFABP発現との関係をマクロファージ系のRAW264.7細胞へのEFABP発現誘導系を用いて調べた。 R2年度の結果から、Axl発現量がEFABP発現誘導により増加し、また、PS吸着した直径1ミクロンのpolystyrene beads取り込みを増加させることが分かった。さらに、Axlがiodixanol濃度勾配超遠心を用いたcell lysate画分でEFABPと同様の分布を示すことを確認した。 上記の結果とEFABPの生理活性である脂肪酸との結合との関係を調べるために、脂肪酸結合ドメインの変異体(C120A, C127A, C120AC127A)を発現誘導すると、特にC120Aの変異体でpolystyrene beads取り込み能が低下することを確認できた。また、共焦点レーザー顕微鏡による観察所見で、EFABP発現により、対照群と比較してAxlは形質膜に偏在した。 脂肪酸結合ドメイン変異体発現では、この偏在が観察されず、これがpolystyrene beads取り込み能低下を引き起こすことが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでの我々の研究で脂肪酸結合タンパク質のひとつである、表皮型脂肪酸結合タンパク質(Epidermal fatty acid binding protein: EFABP)が主要な腸管粘膜組織であるパイエル板のM細胞、樹状細胞、胚中心マクロファージに発現していることを示した。 最も発現強度の高い胚中心マクロファージはその周囲のphosphatidylserine (PS)を表面に露出したB220(B細胞マーカー)陽性細胞を貪食しており、EFABPとの関係が予想された。 分泌タンパク質であるGas6, 膜タンパク質のAxlからなる複合体はPS特異的な接着装置として機能することが先行研究で示されていた。Gas6,AxlとEFABP発現との関係をマクロファージ系のRAW264.7細胞へのEFABP発現誘導系を用いて調べた。 R2年度の結果から、Axl発現量がEFABP発現誘導により増加し、また、PS吸着した直径1ミクロンのpolystyrene beads取り込みを増加させることが分かった。さらに、Axlがiodixanol濃度勾配超遠心を用いたcell lysate画分でEFABPと同様の分布を示すことを確認した。 上記の結果とEFABPの生理活性である脂肪酸との結合との関係を調べるために、脂肪酸結合ドメインの変異体(C120A, C127A, C120AC127A)を発現誘導すると、特にC120Aの変異体でpolystyrene beads取り込み能が低下することを確認できた。また、共焦点レーザー顕微鏡による観察所見で、EFABP発現により、対照群と比較してAxlは形質膜に偏在した。 脂肪酸結合ドメイン変異体発現では、この偏在が観察されず、これがpolystyrene beads取り込み能低下を引き起こすことが考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに明らかにした事象がEFABPの脂肪酸との結合に依存するのか、確認する。INS-1E細胞を用いたin vitroの実験でパルミチン酸はEFABP発現を増強しないが、オレイン酸によりEFABP発現誘導がかかることが報告されている。RAW264.7細胞の培養系にこれらの脂肪酸を添加し、phosphatidylserine (PS)吸着ビーズの取り込み、Axlの発現量変化、あるいは、発現局在が変化するのか確認する。脂肪酸結合が確認された事象に必須ならオレイン酸添加により、EFABP発現誘導に即した変化が起こり、パルミチン酸添加で脂肪酸結合ドメイン変異体誘導に似た変化が起こるはずである。 また、これらの脂肪酸を5%アラビアゴム中に懸濁しC57BL/6マウスに経口投与し、パイエル板内のEFABP発現変化が起きるのか、免疫染色あるいは、パイエル板ホモジネートを用いたウエスタンブロットにて確認する。また、EFABP発現変化に伴い、胚中心マクロファージの貪食や、我々が既に確認しているM細胞あるいは、subepithelial dome(SED)内樹状細胞にみられる周囲の組織の貪食像に変化が起きるか確認する。 EFABPに脂肪酸が結合すると核移行が亢進する。EFABP発現誘導によりAxl発現増強が観られることから、核内に移行したEFABPには転写因子様の活性があることが予想される。以前試みて失敗したelectroporationによる小腸上皮へのEFABP発現ベクター導入を条件を検討しなおして再試行する。EFABP発現誘導により、M細胞様の形質(EFABP発現細胞直下への樹状細胞集塊形成、腸管内IgAの取り込み等)が誘導されることを確認する。
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