研究課題/領域番号 |
20K08274
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
鈴木 良地 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (20396550)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | パイエル板 / 脂肪酸結合タンパク質 / 脂肪酸 / 腸管粘膜免疫 |
研究実績の概要 |
これまでの研究{ (鈴木、2009)、基盤研究(C):22590186, 17K09368 }で脂肪酸と結合することで機能性タンパク質として働く、表皮型脂肪酸結合タンパク質(Epidermal fatty acid binding protein: EFABP)が腸管粘膜免疫機構を構成する主要な組織の一つであるパイエル板上皮内のM細胞、粘膜下の樹状細胞、胚中心マクロファージに発現しており、EFABP発現が腸管内抗原の識別機構として働くことが示唆された。 EFABPと親和性のある不飽和長鎖脂肪酸であるオレイン酸、飽和脂肪酸であるパルミチン酸をそれぞれ300mg/kg/day、14日間経口投与をした結果、オレイン酸投与群でM細胞のEFABP免疫陽性反応が増強し、通常主に上皮下にあるS100陽性細胞の上皮内での観察頻度が増える傾向が観察された。また、濾胞樹状細胞で通常みられないは直径1マイクロメートルの顆粒を蓄える傾向が観察された。 胚中心マクロファージの貪食は膜タンパク質であるAxlと分泌タンパク質であるGas6の複合体が、アポトーシス細胞の表面に露出するphosphatidylserin(PS)を認識することで亢進するが、これとEFABP発現の関係をRAW264.7細胞で確認した。EFABP発現により、Axl発現は増加し、また、Axlの分布がより細胞膜に偏った。EFABPの脂肪酸結合ドメインに変異をいれるとAxl発現量は若干低下し、また、Axlの細胞膜への配向が阻害された。Gas6にはこれらの変化はみられなかった。EFABP発現によるAxlの発現局在の変化に同期してPSコートポリスチレンビーズの取り込み能が低下した。 以上より、EFABP―脂肪酸の複合体がパイエル板内で上皮下への抗原提示、B細胞分化、胚中心マクロファージの貪食能を正にコントロールすることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
EFABPとAxl, Galectin4との親和性をEFABPとGFPのfusion protein を抗GFP抗体を用いたco-immunoprecipitationで検討した際、非常に粘性の高い凝集塊が生じることがあった。これは細胞懸濁液中にDNaseIを加えることでバッファーへの可溶化が出来たため、genomic DNAを含む複合体と考えられた。当初の計画では、EFABPの認識するgenomic DNA配列の解析を先行させる予定だったが、これを実施するための条件検討が必要になったため、EFABP発現下で脂肪酸を負荷すること起きる変化を観察することを先行させた。
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今後の研究の推進方策 |
EFABPが認識するgenomic DNA配列を検討する。 DNAを含む凝集塊の形成を懸濁バッファーの組成と量を検討して、これの形成が少なくとも軽減する条件を見つける。EFABPの強制発現系と脂肪酸結合ドメイン変異型EFABP強制発現系を比較すると細胞懸濁液中に形成される凝集塊の形成が脂肪酸結合ドメインへの変異で軽減される印象があり、脂肪酸と結合することで認識する配列が変化することが予想された。EFABPの認識する配列、とこれが脂肪酸負荷で変化するのかを解析していく予定である。認識する配列のライブラリーはCut & Run kitを用いる。解析は試行錯誤する予算と時間が限られるので自前で行わず、BGI等に外注する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたEFABPの認識するgenomic DNA配列の同定がうまくはしらないことが判ったので、条件検討と結果の解析のため時間が必要なため。
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