研究課題/領域番号 |
20K08278
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊地知 秀明 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70463841)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膵癌 / 接着因子 / alpha4-integrin / 微小環境 |
研究実績の概要 |
臨床の膵癌像をよく再現する膵発癌モデルマウス(膵臓特異的Kras変異+TGF-beta II型受容体ノックアウト)において、接着因子VCAM-1の中和抗体が生存期間を劇的に延長させる(対照群60日 v.s. 投与群250日)結果を得ており、VCAM-1の接着相手であるalpha4-integrin(a4ITG)の阻害による膵癌の制御効果を明らかにすることを目的としている。 新型コロナ禍の影響を受け研究が予定通り進められず、前年度は本研究の背景となるVCAM-1阻害による膵癌制御について膵癌微小環境の変化および血栓形成などの全身の関連症候の制御について解析を加え、GUT誌に報告した。VCAM-1中和抗体により、腫瘍組織の解析では、浸潤する好中球・マクロファージが減少し血管新生も抑制される微小環境変化が生じており、それに加えてVCAM-1中和抗体が膵癌関連血栓塞栓症の全身への進展を抑制していることが明らかとなり、これらが生存延長に寄与したものと考えられた。またマウスのみでなく、血栓症を発症した膵癌化学療法患者の血中VCAM-1およびANPは、血栓症非発症例に比べ、血栓症発症前から有意に高濃度であり、発症予測のバイオマーカーとしての有用性も示唆された。今年度は、まずa4ITG阻害の効果を別の膵癌モデルにおいて検討することとし、ヒト膵癌細胞株の皮下腫瘍モデルに対しa4ITG中和抗体投与を行い、腫瘍重量が抑制される結果を得た。膵発癌マウスに対するa4ITG中和抗体投与も開始している。膵発癌モデルの膵癌組織においてa4ITGは膵癌細胞には発現がなく、間質に稀に発現を認めた。また膵癌担癌時の凝固亢進状態の検証として膵癌細胞と繊維芽細胞、血小板の凝集形成をin vitroのアッセイおよび膵発癌マウスの膵癌組織で検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響で研究活動レベルに制限があった影響で、alpha4-integrinのノックアウトマウスとの交配は期間内には困難と考えられる。alpha4-integrin中和抗体を用いた実験を進めることとした。
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今後の研究の推進方策 |
alpha4-integrinのノックアウトとの交配は行わず、alpha4-integrin中和抗体を膵発癌マウスに投与し、微小環境の変化や生存期間の検討を中心に行うこととし、現在進めている。また膵癌細胞、線維芽細胞、血小板との相互作用についてもin vitroおよびin vivoの系で検討し、さらにalpha4-integrin中和抗体存在下での変化の検討も行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
alpha4-integrinノックアウトマウスとの交配は本研究期間中には行わない計画へと変更したため、他の試薬等に使用計画も変更した。その結果、次年度使用額が生じた。今年度はalpha4-integrin中和抗体を用いたin vitro、in vivo実験へとシフトし、進行期の膵癌の制御に対する効果を検証する。
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