膵発癌モデルを用いた微小環境の新規標的制御による膵癌制御法の開発

2022 年度 研究成果報告書

• 研究課題/領域番号: 20K08278
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 配分区分: 基金
• 応募区分: 一般
• 審査区分: 小区分53010:消化器内科学関連
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 伊地知 秀明 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70463841)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: 膵癌 / がん微小環境 / 接着因子 / alpha4-integrin

研究成果の概要

我々は、臨床の膵癌像をよく再現する膵発癌モデルマウスに対する接着因子VCAM-1の中和抗体投与により生存期間が劇的に延長することを見出した。その機序には膵癌関連血栓症の抑制効果も寄与したと考えられる。本研究では、VCAM-1の結合相手alpha4-integrin(a4ITG)の阻害による膵癌の制御を検討した。ヒト膵癌細胞株の皮下腫瘍はa4ITGの阻害により増殖抑制がみられたが、膵発癌モデルへのa4ITG中和抗体投与では、血栓抑制・生存延長効果とも有意ではなかった。したがって膵癌の制御にはVCAM-1阻害に優位性があり、a4ITG中和抗体薬の膵癌への適用外使用を推進する根拠は得られていない。

自由記述の分野

消化器内科学　膵癌

研究成果の学術的意義や社会的意義

最難治癌である膵癌の制御のために、alpha4-integrin阻害による抗腫瘍効果、血栓抑制効果、予後改善効果を明らかにし、臨床に存在するalpha4-integrin中和抗体薬を膵癌に適用する根拠を得ようとしたが、ここまでの結果では、alpha4-integrinよりもVCAM-1を阻害することの優位性が示されることになった。しかしヒト膵癌細胞を使った一部の結果ではalpha4-integrinの阻害による膵癌抑制効果も示されている。進行膵癌の極めて厳しい予後改善のために、2種の接着因子阻害による膵癌制御法の知見が蓄積された。