研究課題
本研究の目的はHLAクラスI抗原とKIR遺伝子サブタイプを次世代シークエンサーで超高解像度解析を行うことで原発性胆汁性胆管炎の疾患発症および病態進展との関連性を明らかにすることである。本年度は原発性胆汁性胆管炎300名と健常人325名からDNA検体を採取し、HLA class Iアレルのタイピングを行った。さらに、KIR遺伝子のタイピングを施行した。原発性胆汁性胆管炎の肝線維化を非侵襲的に評価する方法として血液中のMac-2 binding protein glycosylation isomer (M2BPGi)とVibration-controlled transient elastography (VCTE)で肝硬度について検討を行った。以前から私達のグループの既報通りにM2BPGiは肝組織と有意な相関を示したが肝硬度も有意な相関を示しており共に本疾患を簡便に非侵襲的に評価できる方法である事を明らかにして報告した。Joshita S, JGH 2020)さらに、C型肝硬変約200名についてKIRとHLAを測定し、肝細胞癌の発症との関連性について検討したところKIR3DL1/HLA-B Bw4、KIR3DL1/HLA-B Bw4-80Ile陽性の場合に、有意に累積発がん率が高率になることが明らかとなった。多変量解析では男性、AFP高値、KIR3DL1/HLA-B Bw4陽性が独立した危険因子であることが判明した。これら危険因子を3つ持つ高リスク群、1か2持つ中リスク群、1つも持たない低リスク群、に分けると有意に高リスク群、中リスク群、低リスク群の順に累積発がん率が高率であることを明らかにした。(Umemura et al. 投稿中)
2: おおむね順調に進展している
原発性胆汁性胆管炎患者は残り150名についてHLAとKIRのタイピングを行う予定である。来年度には既に検査済みの300名の患者、325名の健常人のデータを合わせて疾患感受性、病態予後との関連性について明らかにすることが可能であり、順調に進展している。患者30例において次世代シークエンサーを用いた全HLA遺伝子の解析は終了して6桁から8桁のHLAのタイピングは終了している。現在得られた塩基配列について従来から報告のある配列との相違を検討中である。新しいアリルの発見もあり投稿準備中である。
HLA領域のリシークエンシング解析は投稿準備中であり、早急に投稿を行う。新たに見つかった変異は病態と関連するか統計学的検討を行い、確認をする予定である。HLA/KIRについては既にタイピング法も確立し、原発性胆汁性胆管炎の残り150検体を測定するだけで最終結果が確認できる。
本年度施行したKIR/HLAの測定について想定より費用がかからなかったため。次年度の残りの症例の解析について次年度使用額を充てることができるため、健常者全ての解析が可能となる。より、詳細なデータ解析が行えると考えられる。
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