研究課題
本年度はIgG4関連疾患の一つであるIgG4-related periaortitis/periarteritisの発症に関連する遺伝学的検討を行った。75名でゲノムワイド関連解析を施行した際にインターロイキン1受容体タイプ1(IL1R1)の関連性が示唆されたため、IL1R1遺伝子の8つのSNPsについて解析を行った。6つのSNPsのマイナーアレルがIgG4-related periaortitis/periarteritisで有意に高率であることを明らかにした。(Umemura et al. Gene 2022)本結果に関連して血清中のサイトカインに注目をして検討を行うとIgG4-related periaortitis/periarteritis合併例では血清IgG4値は高値であるが(p=0.0074)であったが血清IL-1β 値は有意に低値であった(p=0.00037)。可溶性IL-1R2 値はIgG4-related periaortitis/periarteritis合併例と健常者群で非合併例より有意に高値であることも明らかにした(p=0.00001)。以上より、IgG4-related periaortitis/periarteritis はIgG4関連疾患における炎症プロセスの活発な局面を表現している可能性が示唆された。(Ashihara et al. Adv Med Sci 2022)B型慢性肝炎325名、C型慢性肝炎799名、健常対照群 355名についてHLA-G遺伝子SNPsと14bp Ins/Del多型を解析したところ、B型慢性肝炎では健常群より14 bp Insアリル(27.1% vs. 20.6%、OR 1.43、P=0.005)およびrs1063320 Gアリル(OR 1.78、P<0.001)が高頻度だった。rs1049033Tアリルが優性モデルにおいて、年齢や性別から独立してHCC発症と有意な関連を示した(OR 1.95、P=0.04)。rs1736933Aアリルが劣性モデルで年齢から独立してHBs抗原陰性化と有意な関連を示した(OR 3.23、P=0.003)。以上の結果からB型慢性肝炎において14bp Ins/Delとrs1063320がHBV感受性に、rs1049033がHCCに、またrs1736933がHBs抗原陰性化に関連することが示唆された。(Okumura et al. Human Immunology 2023 in press)
2: おおむね順調に進展している
KIR/HLAと自己免疫性肝炎、C型肝炎、B型肝炎の関連性については本課題で既に明らかにした。残る課題は原発性胆汁性胆管炎におけるKIR/HLAの関連性についてを明らかにすることである。
原発性胆汁性胆管炎患者は400名の患者、325名の健常人のデータを合わせて疾患感受性、病態予後との関連性について詳細な解析を施行中であり、本年度中に論文発表を行う予定である。
本課題の目的であるKIR-HLAと自己免疫性肝疾患の機序の解明について、当初の予定よりはるかに安価でかつ大量に効率よく解析できる方法を開発することに成功したため消耗品購入に関する当該助成金が生じた。翌年度には次世代シークエンサーを用いることで従来の方法では解明できなかったHLA遺伝子とKIR遺伝子の超高解像度解析を行い、KIR-HLAの肝疾患における詳細な機能解明を遂行する計画を立てた。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Human Immunology
巻: - ページ: -
Gene
巻: 820 ページ: 146212~146212
10.1016/j.gene.2022.146212
Advances in Medical Sciences
巻: 67 ページ: 257~261
10.1016/j.advms.2022.06.003