研究課題
嚢胞性線維症は、肺、膵臓、腸管、胆道などに病変が現れる難治性の潜性遺伝性疾患であり、難病および小児慢性特定疾病に指定されている。ヨーロッパ人種の最も多い遺伝病であるため、欧米では研究が進み分子治療が始まっている。日本を含む東アジアでは稀であるが、研究代表者らの調査をきっかけにして、2012年に患者レジストリが始まり、2023年5月現在、日本国内で約50名の患者を把握している。また、研究代表者が所属する研究室は、2007年以降、嚢胞性線維症の遺伝子診断を担当しており、原因となるCFTR遺伝子バリアントのタイプがヨーロッパ人種ものとは全く異なること、日本人の嚢胞性線維症はヨーロッパ人種に比べて重症が多いことが分かってきた。本研究は、嚢胞性線維症の膵臓および胆道病変の根本的な治療を実現するために、個々の患者から樹立したiPS細胞を用いた研究を実施することを最終的な目的とした。今年度は、日本/東アジアタイプのCFTRバリアントについて、臨床症状との関係、培養細胞に発現させた場合の分子病態および分子治療薬の効果について解析を進めた。また、ヒトiPS細胞から誘導した胆管上皮細胞が胆管オルガノイドを形成していく要因についての解析を進めた。1994年以降の日本の嚢胞性線維症患者132名(男性65名、女性67名)の臨床データの解析により、胎便性イレウスと電解質異常を合併する割合が高いことがわかった。また、2012年末での生存期間の中央値が18.8年であったのに対して、10年後の2012年末には25.2年と予後の改善が見られた。基本的な治療薬が日本で使えるようになったこと、嚢胞性線維症の認知度が高まったことなどが理由と考えられる。しかし、なお、欧米(~40年)と比べると短く、分子治療薬の適応について基礎研究を進める必要がある。
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胆と膵
巻: 43(8) ページ: 743-750
Advanced Healthcare Materials
巻: 11 ページ: 2200880~2200880
10.1002/adhm.202200880
https://www.cfnetworkjapan.org/