研究実績の概要 |
腸内から検出される口腔細菌による全身疾患への影響に大きな注目が集まっている. また,濾胞性ヘルパーT (Tfh)細胞の機能低下が腸内細菌叢の異常や免疫系の過剰な活性化を引き起こすことが明らかとなっている. 我々はこれまでに, 自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis;AIH)患者に口腔細菌の異常を認め, 腸内細菌叢と関連すること, AIHの病態にTfh細胞が関与することを報告した. 口腔―腸管連関を介したAIH発症や肝炎悪化が想定されるが, 口腔細菌の直接的な影響は不明である. 本研究の目的は, 嚥下されたAIH患者の唾液や口腔細菌がAIHの病態におよぼす影響を明らかにすることである. AIHマウスモデルにヒト口腔細菌移植を行い, 腸内細菌叢やTfh細胞機能の変化を評価し, 肝炎発症との関係を解析する. その関係が明らかになれば, AIHの病態解明に大きく寄与し, 口腔内プロテオバイオティクスを用いた予防や治療法の開発につながることが期待される.
本研究では, AIHにおけるTfh細胞と口腔細菌との関連を解明することが目的であり, B細胞成熟, 活性化, 抗体産生誘導の中心的存在であるTfh細胞に焦点をあてている点とAIH患者の口腔細菌を用いる点が特色である.
まず、AIHに関連する口腔細菌同定について検討した。インフォームド・コンセントが得られたAIH患者18例、健常者12例の唾液における口腔細菌叢の変化について, 次世代シーケンサ・アンプリコン解析(NGS)を行った。結果は、健常者と比較してAIHで有意に口腔内細菌叢が変化しており、門、属、種レベルにおいて相対的に増加または低下している菌を同定した。
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