研究実績の概要 |
【目的】口腔・腸内細菌叢異常(dysbiosis)は, 自己免疫性肝炎(AIH)患者の病態と関連していることが注目されている. 今回我々は, AIH患者における口腔細菌の組成変化やその予測機能を評価し, 増加する口腔細菌がAIHの病態と関連するか実験的AIHマウスモデルを用いて検討した【方法】AIH患者18名と健常者(HC)12名の口腔細菌叢について16SリボソームRNA遺伝子を用いたメタゲノム解析を行なった. さらに, PICRUSt2を用いて予測された機能的遺伝子の違いをKyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)のオルソログを参考に精査した. 次に, ヒトAIHと関連が報告されている口腔細菌Veillonella disparをAIHマウスモデル(S-100 model)に経口投与し, 肝機能や肝組織の変化を評価した【結果】αおよびβ多様性解析の結果, AIH患者の種の豊富さ(Richness)はHCより高く(Chao 1, p<0.05), 2群間で大きく構成が異なっていた(p<0.05). 細菌の相対変化量を比較した結果, HCと比較してAIH患者ではVeillonella属を含む5種類,Veillonella dispar種が有意に増加していた. さらに, 予測された機能的遺伝子は, HCと比較してエンド-1,4-β-キシラナーゼはAIH患者で発現亢進していたが, アミノ酸N-アセチルトランスフェラーゼ等,7つの遺伝子 は減少していた. S-100 modelでは, Veillonella dispar経口投与群は, 非投与群と比較して, ALTが有意に上昇し, 肝組織で炎症細胞浸潤, Sirius red染色による肝線維化進行を認めた. 現在, 腸管バリアや腸内細菌叢, サイトカインの評価を継続して行なっている.
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