本研究では腫瘍細胞と免疫細胞の関係に関する基礎実験レベルのモデルの構築に加え、実際に人で糞便移植を実施することによって、免疫チェックポイント阻害剤の効果に対する影響について検討することを目的として計画された。残念ながら計画通りに研究を進めることができなかった。基礎実験モデルの構築はオルガノイドモデルをベースに、生体内に近い免疫環境の構築を目指したが、目的を達成することはできなかった。糞便移植につながるバイオマーカーの探索として臨床検体を集めて、腸内細菌と腫瘍組織、血中の免疫マーカーの関連についての解析は進めることができたが、糞便移植につなげられるような成果は得られなかった。しかしながら、研究の中で、胃癌患者における血中アミノ酸の値が免疫チェックポイント阻害剤の効果と関連することを発見し、学会で報告した。さらにアミノ酸の値と他の免疫マーカーや腸内細菌プロファイルとの関連についても検討を進めている。免疫チェックポイント阻害剤は様々な癌種で使用されるようになっており、今後もさらにその適応範囲は拡大していくと思われる。一方で、無効な症例も多くその耐性の克服が今後の課題となっている。今回の研究では糞便移植について検討するまでには至らなかったが、今回明らかにしたアミノ酸と免疫チェックポイント阻害剤の効果に影響を及ぼす機序を明らかにすることで、免疫チェックポイント阻害剤の耐性を克服や治療効果を増強するような治療方法の開発につなげていきたい。
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