研究課題
①癌細胞における代謝変化とオートファジーの動向との関連性の解明:複数のヒト肝癌細胞株のオートファジー機能に関して評価したところHuh1とJHH5細胞では蛋白分解酵素カテプシンDとカテプシンL発現が促進し、Huh7とJHH7細胞株では逆に抑制されていることが分かった。興味深いことにカテプシン発現が促進している細胞株ではオートファジーの分解基質であるp62蛋白の発現が増加していた。このことから不溶細胞ではp62蛋白の安定性によってカテプシン誘導を介して細胞内代謝変化を調整している可能性が示唆された。また昨年の解析によってオートファジー誘導能の変化によって細胞内の脂質代謝も変化し、それがPPARαアゴニストによって改善するという新たな知見を得ることができたが、PPARαアゴニスト添加によって傷害ミトコンドリア除去も促進し、細胞内の酸化ストレスも軽減することが分かった。②オートファジー誘導性の強い癌細胞と弱い癌細胞において発現が変化する核蛋白の同定とアミノ酸代謝変化との関連性の解明:オートファジー誘導能によって発現が変化する不溶性核蛋白を解析したところ、マウスとは異なる結果であったためヒト肝細胞株において蛋白分解酵素阻害薬を添加し、オートファジー機能抑制後の核蛋白解析を行った。Volcano plot解析によってヒト化肝細胞におけるオートファジー機能不全に関連した核不溶性蛋白を抽出すことができた。核不溶性蛋白は細胞障害時に血中に排出され、血液中で長期間安定して検出されることから、今回、検出されたオートファジー機能抑制によって発現が増加した不溶性核蛋白群は、脂肪性肝疾患やアルコール性肝炎などオートファジー機能障害が病態発症に寄与すると考えられている疾患群の病態評価用の血清マーカーとして有望である可能性が示唆された。
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