非アルコール性脂肪性肝疾患は、肥満人口の増加に伴い世界的な公衆衛生上の問題となる。NAFLDは、非アルコール性脂肪肝(NAFL)と非アルコール性脂肪性肝(NASH)に分類されNAFLDの一部は、NASH、肝硬変、肝細胞癌へと進展する予後不良な病態をたどるため、早期に高リスク症例の囲い込みが必須である。しかしながらNASHの診断・病態把握には肝生検以外の方法が存在せず、非侵襲的な診断法の開発が急務である。我々は、131例の肝生検により診断されたNAFL症例・NASH症例の血清を独自に開発した網羅的な複合糖質糖鎖解析(総合グライコミクス)を行い、肝逸脱酵素と関連のなく肝における炎症を鋭敏に反映する新規の血清糖鎖マーカーAAT-A3Fを見出し報告した( 特許公開番号 WO2017126514A1)。この血清AAT-A3F値は、肝逸脱酵酵素値と相関せず・肝細胞内の炎症性サイトカイン発現・肝組織炎症と相関し、病早期のNASHをも診断可能なマーカーである事を明らかにした。更に、この新規NASH 診断、病態反映マーカーであるAAT-A3Fが、NASH進展の早期病変を検出可能である事を確認した。さらに、その機序として炎症性サイトカインであるIL-6が高値とともに糖転移酵素 FUT6が高値となる事を明らかにした。このIL-6とFUT6発現は正の相関をしめし、更に肝内FUT6と血清AAT-A3Fは正の相関を示す事を肝生検検体を用いて明らかにした。すなわち、AAT-A3F上昇は肝炎症により発現上昇が起こったFUT6により誘導されている可能性がある。これら、知見よりAAT-A3Fの高いNASH診断、病態進展マーカーとして可能性を明らかにした
|