研究課題/領域番号 |
20K08305
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田尻 和人 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (30512165)
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研究分担者 |
仁井見 英樹 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (50401865)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肝硬変 / 肝性腹水 / Tm mapping法 |
研究実績の概要 |
肝硬変はウイルス肝炎、脂肪肝、アルコール性肝障害などの持続により、引き起こされる病態で本邦を含むアジアでは患者も多く、その対策が重要である。肝硬変に生じる腹水は肝硬変合併症の初発症状となることが多く、特発性細菌性腹膜炎、肝腎症候群、肝性脳症など様々な病態が誘発され、生命の危機に至る。そのためその病態の解明が重要である。腹水貯留後に特発性細菌性腹膜炎が起こると、様々な合併症が誘発されるが、特発性細菌性腹膜炎の診断にておいて腹水中の細菌培養の陽性率は低く、どのような菌や菌体成分が合併症を俣らしているかは解明されていない。我々の施設ではTm mapping法という高感度に細菌の同定と定量が可能な解析法を有しており、肝硬変患者の腹水をTm mapping法で解析し、また同時に腹水中の免疫細胞の動態を解析することにより、特発性細菌性腹膜炎の起因菌の同定のみならず、肝硬変合併症の病態の解明につながると考えられる。 初年度は肝硬変患者の腹水のTm mapping法を用いた解析と従来の腹水培養による検出の比較と、腹水中の免疫細胞解析の条件検討を進めた。2年目となる本年度は患者リクルートを勧め、Tm mapping法による細菌の検出同定、免疫細胞解析をすすめた。本年度中までで20例の患者の腹水を採取し解析した。腹水培養で細菌同定に至ったのは1例のみであった。Tm mapping法では6例の細菌が検出され、4例で細菌が同定され、2例は未知の細菌であった。細菌培養で検出された菌はTm mappingでの同定と一致していた。腹水免疫細胞の解析では活性化したマクロファージ、好中球が検出され、病態との関連が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ情勢もあり患者リクルートが想定よりは遅いペースである。Tm mapping法の有用性を指示するデータがでてきており、更に検討をすすめていく。
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今後の研究の推進方策 |
Tm mapping法の有用性を指示するデータがでてきており、症例数を更に追加し検討をすすめる。Tm mappingで検出され、培養で細菌の同定に至らない例でのマーカーとなる因子を同定し、特発性細菌性腹膜炎の診断精度の向上を図る。免疫細胞の動態と肝疾患の病態との関連の検討をすすめ、腹水中の細菌、免疫細胞、病態とのクロストークの解明につなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ情勢もあり研究全体の進捗がやや遅延したことにより余剰金が発生した。本年度は研究も進行しはじめ患者リクルートも進んできている。次年度は更に研究のペースを加速させていく予定である。
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