研究課題
後日入力肝星細胞と肝癌細胞を共培養すると肝星細胞のオートファジーは促進し、肝癌細胞の増殖が促進した。この肝星細胞による肝癌細胞増殖促進効果は、肝星細胞のAtg7を欠損させてオートファジーを抑制すると、減弱した。肝癌細胞と肝星細胞を免疫不全マウスに共接種して作製したゼノグラフト腫瘍は、肝癌細胞だけを接種して作製したゼノグラフト腫瘍より増大速度は速く、接種する肝星細胞のAtg7を欠損すると腫瘍増大速度は低下した。肝星細胞特異的Atg7欠損マウスを作製してNASH発癌を誘導したところ、コントロールマウスに比して腫瘍個数や最大腫瘍径は有意に小さく、腫瘍部のKi67陽性癌細胞数も減少した。培養細胞を用いた網羅的な遺伝子発現解析の結果、肝癌細胞との共培養によって肝星細胞からGDF15が発現増大し、肝星細胞のAtg7を欠損させるとGDF15増大が減弱することを見出した。そこで、肝星細胞のGDF15を欠損させて肝癌細胞と共培養すると、肝星細胞との共培養による肝癌増殖促進効果は抑制された。ゼノグラフト腫瘍でも接種する肝星細胞のGDF157を欠損すると腫瘍増大速度は低下した。肝星細胞特異的GDF15欠損マウスを作製してNASH発癌を誘導したところ、コントロールマウスに比して最大腫瘍径は有意に小さく、腫瘍部のKi67陽性癌細胞数も減少した。ヒト臨床サンプルでは、非腫瘍部に比して腫瘍部でGDF15の発現は有意に上昇していた。免疫染色にて間質細胞がGDF15陽性となる症例は、非癌部では約2割であったが癌部では約5割と高く、GDF15陽性の間質細胞数も癌部で有意に多かった。以上より、肝星細胞のオートファジー亢進を介したGDF15の発現増加は肝癌の発育進展に寄与することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
今年度の研究結果によって、肝癌組織における肝星細胞のオートファジー促進が肝癌増大に与える機序としてGDF15を介した機序の存在が明らかとなり、本研究課題はおおむね順調に進展している。
上記の通り順調に進行しており、計画書に準じて研究を進めていく。特に次年度以降にマクロファージや血管内皮細胞などと肝癌細胞を共培養し、マクロファージや血管内皮細胞の存在が肝癌細胞の増殖促進に影響を与えるか検討する。また、その機序についても検討を行う。in vivoでも並行して同様の検討を行い、マクロファージのオートファジーが抑制するマクロファージ特異的Atg7欠損マウスなどを用いて解析を進める。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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