肝星細胞と肝癌細胞を共培養すると肝星細胞のオートファジーは促進し、肝癌細胞の増殖が促進した。この肝星細胞による肝癌細胞増殖促進効果は、肝星細胞のAtg7を欠損させてオートファジーを抑制すると、減弱した。培養細胞を用いた網羅的な遺伝子発現解析の結果、肝癌細胞との共培養によって肝星細胞からGDF15が発現増大し、肝星細胞のAtg7を欠損させるとGDF15増大が減弱することを見出した。そこで、肝星細胞のGDF15を欠損させて肝癌細胞と共培養すると、肝星細胞との共培養による肝癌増殖促進効果は抑制された。肝星細胞のオートファジー亢進を介したGDF15の発現増加は肝癌の発育進展に寄与することを明らかにした。
肝発癌モデルとして肝細胞特異的Kras変異マウスであるKrasG12Dマウスを用いた。このマウスの癌部ではp-STATとその標的遺伝子、IL-6ファミリー分子の発現上昇を認めた。また癌部ではCTGFが高発現しており、各種IL-6ファミリー分子、STAT3標的遺伝子の発現と正の相関を示した。癌組織では、IL-6ファミリー分子は主に肝星細胞、マクロファージ、類洞内皮細胞、T細胞などの間質細胞が発現していた。STAT3を肝細胞特異的に欠損したKrasG12Dマウスでは癌部においてp-STATおよびCTGFの発現が低下し、腫瘍の増大進展が抑制された。IL-6ファミリー分子の刺激により肝癌細胞のp-STAT、CTGFの発現が上昇し、細胞増殖が亢進した。KrasG12DマウスにおいてCTGFを肝細胞特異的に欠損させると、癌部においてIL-6ファミリー分子、p-STAT3の発現が低下し、腫瘍の増大進展が抑制された。 肝癌においてSTAT3はCTGFとIL-6ファミリー分子を介した腫瘍間質反応により活性化し、肝癌の増大進展を促進する可能性が示唆された。
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