研究課題/領域番号 |
20K08311
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
馬場 英司 九州大学, 医学研究院, 教授 (00315475)
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研究分担者 |
有山 寛 九州大学, 大学病院, 助教 (80713437)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 消化器腫瘍 / 胃癌 / 腫瘍免疫 / リンパ球 |
研究実績の概要 |
消化器癌組織の中には様々な種類の免疫細胞が入り込んで、抗腫瘍免疫を担っています。これらの一部には三次リンパ組織様構造(TLS)と呼ばれる、免疫細胞が集まった構造体を形成している場合もあります。腫瘍組織に侵入する免疫細胞は抗腫瘍作用としてどのような機能を果たしているのか、またこれら免疫細胞の種類はどのようなものか、TLSはどのような免疫細胞により構成されているかなどの詳細は未だ明らかではありません。本研究ではまずこのような腫瘍組織に侵入している一つ一つの免疫細胞の種類や特徴を測定して解析しました。 手術あるいは生検により得られた進行胃癌組織のホルマリン固定標本(50症例余り)を用いて、顕微鏡観察により胃癌組織の存在部位を確認の後、フリューダイム社のハイペリオンイメージングシステムにより、免疫細胞の種類や機能に関係する30種近くの分子がそれぞれの細胞上どのくらい発現しているかを測定しました。一つの免疫細胞上に発現する各種分子の量を知ることで、その細胞の由来を知る事ができます。その結果、特定の分子の発現パターンを示すCD4陽性Tリンパ球集団が多く侵入している胃癌症例では予後良好であることを見いだしました。現在はこれらの特定のTリンパ球集団が抗腫瘍能とどのような分子機序で関わっているかを解析しています。これらの結果から、胃癌細胞の制御にどのような特徴を持つ免疫細胞がより有効かが明らかになり、診断法や治療法の開発に有用と考えられます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象として50症例近くの進行胃癌の組織検体および全身化学療法前後の末梢血検体を集積できた。胃癌組織に浸潤する免疫細胞および三次リンパ組織様構造(TLS)の解析のために多重免疫染色・マルチスペクトルイメージングシステム(Perkin Elmer社Mantra)を使用して解析を行う予定としていたが、Fluidigm社Hyperion Imaging Systemによって最大37色の多重染色による解析が可能となったため、同法から解析準備を行った。通常の免疫組織染色とHyperionによる細胞上の標的分子発現強度の測定値に差がないことを確認した。その後順次、胃癌検体を用いて組織浸潤免疫細胞を個別に同定、定量を行い、20例まで測定を終了した。この過程で、特定の分子の発現パターンを有するリンパ球集団が多い患者においては予後良好の傾向があることが見いだされた。そのため現在は未測定検体の解析を進めると共に、上記の予後に関連するリンパ球サブセットの機能を解明するため、患者末梢血免疫細胞を用いた測定を計画している。研究の経過は以上であるため、進捗状況は概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
消化器癌の組織における浸潤免疫細胞とこれらが形成する三次リンパ組織様構造(TLS)の詳細な解析を行う事で、腫瘍組織における免疫細胞の詳細な種類と、その機能と疾患の予後との関係の解明を目指して研究を進めている。その過程で特定の分子発現パターンを有する新たなリンパ球集団が予後良好に関連することが分かったため、この細胞集団の表現型の詳細な解析、免疫学的機能の解析を行う事により、胃癌における免疫制御の新たな機序を解明することが期待される。この新規リンパ球集団の組織内TLSでの分布についてもHyperionによる測定データに基づいて解析が可能と考える。本年度は集積した胃癌組織検体のHyperion解析を更に進めることに加え、患者末梢血免疫細胞においても当該リンパ球集団が存在するか、これらがどのような免疫学的機能を有するかについて解析を行う。末梢血免疫細胞のより詳細な表現型解析が必要となった場合は、フローサイトメトリーによる多重染色に加えて、Fludigm社Helios(cyTOFシステム)を用いてより多くの分子の発現を同時に検出する予定である。
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