研究課題/領域番号 |
20K08317
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
中出 幸臣 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70431400)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コノフィリン / 高脂肪食 / NASH / メタボローム解析 |
研究実績の概要 |
NC群、NC + CnP群、HFHFHCD群、HFHFHCD + CnP群の各群のマウス肝よりmRNAを抽 出しトランスクリプトーム解析にて発現変動している遺伝子をスクリーニングした上で遺伝子プロファイリングを行い、各種遺伝子のパスウエイ解析の比較を行った。マウスの凍結肝組織からRNAを抽出しcDNAに逆転写させ、Whole mouse genome CGHマイクロアレイを用いて赤色蛍光色素(Cy3)で、それぞれのコントロールを緑色蛍光色素 (Cy5)で標識し、両者をスライドグラス上のプローブをハイブリダイズさせ、蛍光シグナル強度測定を行った。次にAgilent Feature Extraction Software(FES)を用いてマイクロアレイイメージファイルを読み出し、データ分析システムを用いて、各群における各遺伝子の信号強度を対照群との間で比率を算出し、MAPP Finderを用いて特定のpathwayに指定された範疇の遺伝子が偶 然より多く含まれているか評価した上で、各遺伝子発現値をPathwayマッピングし肝脂肪化、炎症および線維化に関連するシグナルに関してどのように変化しているか比較をすすめた。その結果、肝脂肪化に関しては、代謝亢進に関連したPPARA、CPT1、CPT2、ACOX1といった分子の発現がHFHFHCD + CnP群で亢進していた。また炎症に関してはTNFalpha、CD68、TLR4がHFHFHCD群で増加し、HFHFHCD + CnP群で減少していることが確認された。さらに肝線維化に関してはTGFbeta、TIMP1がHFHFHCD群で増加し、HFHFHCD + CnP群で減少していることが確認された。しかし、パスウエイ解析においては、肝脂肪化、炎症および線維化それぞれにおいて特定のパスウエイは見いだせなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでにHFHFHCDで肝脂肪化、炎症、線維化が誘導され、CnPを加えることでこれらが軽減した。またHFHFHCD群とHFHFHCD+CnP群の間に体重増加には差がみられないこと、さらに肝脂質のメタボローム解析にて、HFHFHCD+CnP群で肝TGは減少したが、PEおよびdMePEは増加した。代謝亢進に関連したPPARA、CPT1、CPT2、ACOX1といった分子の発現がHFHFHCD+CnP群で亢進していた。炎症に関してはTNFalpha、CD68、TLR4がHFHFHCD群で増加し、HFHFHCD+CnP群で減少していることが確認された。さらに肝線維化に関してはTGFbeta、TIMP1がHFHFHCD群で増加し、HFHFHCD + CnP群で減少していることが確認された。今年度はCnPのNASHおける肝脂肪化抑制にPPARalphaが関与しているという仮説のもと、PPARalpha knockoutマウスに対してHFHFHCDを用いてNASHを誘導し、CnPを投与することで肝脂肪化および肝線維化の改善の可否を検証する予定であったが、現在まで結果がでておらす。当初の予定より進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は昨年度予定してたPPARalpha knockoutマウスおよびWildtypeマウスに対してHFHFHCDを30週間にわたり摂食させながらCnPを投与し、4週間毎に採血を行い血清AST、ALT、TNF-alpha、IL-6、インスリンおよび血糖を測定し、マウスを屠殺して採血の後、血清AST、ALT、TNF-alpha、IL-6、インスリンおよび血糖を測定し経時的変化を比較する予定である。また肝における脂肪化、炎症細胞浸潤および線維化の組織学的比較を予定していく。またin vitroの系においてHep3B細胞に対してパルミチン酸を用いて脂肪化誘導を行い、CnPを投与することで、肝脂肪化が抑制されるか検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナに伴う臨床業務の増加と、研究補助員の確保に難渋したことにより、実験の遂行が遅延した。このため本年度の実験で使用予定であった、PPARAKOマウス作製費用と肝癌細胞に関する予算を次年度に使用が順延された。
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