研究課題
非アルコール性肝疾患(NAFLD)は一部が非アルコール性肝炎(NASH)として肝硬変、肝癌に進行するためその対策は急務である。NAFLDからNASHに進展するメカニズムは現在でも不明であるが、様々な環境要因や遺伝的要因の関与が想定されている。昨年度までの研究成果として、NAFLDと類似した病態を持つob/obマウスの空腹時門脈血において一部の遊離アミノ酸れべるが低下していることを見出し、その中でもメチオニン(Met)とチロシン(Tyr)の低下が肝臓内のクエン酸回路の中間体であるフマル酸を低下させることを明らかにした。高脂肪、Met制限、Tyr欠損食を与えることにより肝臓内のフマル酸レベルが低下し、肝臓からのVLDLの分泌が低下することによりNASH様病態を惹起することも明らかにした。その作用機序として、酸化ストレス応答機構であるNrf2-Keap1システムを介していることも肝臓特異的Keap1欠損マウスを用いて明らかにした。(Hepatology 2021)今年度の成果としては、実際のNAFLD、NASH患者の末梢血中のVLDLを含めたアポリポタンパクの血中プロファイルを明らかにすることを目標とした。これまでの細胞実験、動物実験結果に一致して、肝臓から分泌される中性脂肪(TG)を示す血中VLDL-TG、特に成熟したVLDL中のTGであるLarge VLDL-TGの濃度は血中のMetとTyrに相関関係があることを見出した。更に線維化進行の少ないNAFLDにおいてその傾向が強いことが明らかとなった。
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Hepatology research
巻: 11 ページ: in press
10.1111/hepr.13898.