胃内細菌が非H.pylori胃炎に与える影響を、引き続き胃炎マウスモデルを用いて明らかにした。B細胞を欠損するJh-/-マウス、およびB細胞特異的抗体である抗CD19抗体によるB細胞アブレーション実験の結果、B細胞は胃内細菌叢依存的に誘導される好中球・単球が胃炎進展を促進する一方、胃炎進展を抑制する働きがあることがわかった。同様に、IgA-/-マウスを用いた検討により、IgA産生細胞もB細胞と同様に胃炎進展を抑制する働きがあることがわかった。IL1b強制発現マウスモデルにみられる胃内リンパ濾胞内において、CD11b+細胞・Mast細胞は胃内Dysbiosisにより活性化され、IL23a・Tnfa・IL13・IL4などの分泌を介して上皮細胞の増殖・化生性変化を促進し、B細胞・IgA産生細胞系の増殖を抑制した。B細胞・IgA産生細胞を欠損するモデルでは胃内Dysbiosisが誘導され、細菌叢依存的にCD11b+細胞の増加と胃炎の増悪を呈することが分かった。また、Mast細胞をアブレーション可能なMast-DTRマウスを用いた検討により、Mast細胞は胃炎変化のうちの特に粘液産生性Metaplasiaの形成に重要であることがわかり、その作用はIL13依存性であることが示唆された。すなわち、炎症惹起性のCD11b+細胞・Mast細胞と、炎症抑制性のB細胞・IgA陽性細胞は相互に抑制的作用を有し、胃炎進展過程における複雑な病態形成に関与していることが明らかとなった。ヒトのピロリ菌除菌後症例の胃炎粘膜においてもこれらの炎症細胞浸潤が認められる症例があり、ヒトのピロリ除菌後胃炎の病態においても重要な役割を果たす可能性がある。
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