研究課題/領域番号 |
20K08324
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 達也 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (60843753)
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研究分担者 |
立石 敬介 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20396948)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膵癌 / CAF |
研究実績の概要 |
腫瘍内の間質細胞や免疫細胞を含めた微小環境は癌細胞自体の増殖や悪性度に影響を及ぼす。これまでの前研究において、膵癌の癌線維芽細胞CAFの活性化にエピゲノム制御機構が重要であることをヒト膵癌由来PDXを用いて明らかにし報告した。本研究では、ヒト膵癌におけるCAFの機能的活性化のみならず、その多様性と相互の可塑性が腫瘍自体の悪性度に及ぼす影響について、エピゲノムによる遺伝子発現制御との関連とともに検討中である。 豊富な線維性間質によるDesmoplasiaをその病理学的特徴とする膵癌では、その腫瘍組織の大部分を占める活性化したCAFや免疫細胞などの間質系細胞と、産生される膠原線維や増殖因子が腫瘍促進的な微小環境を構成し、膵癌細胞自体の増殖や各種治療に対する抵抗性を誘導すると考えられてきた。最近、膵癌組織における癌随伴性線維芽細胞CAFに多様性と可塑性があることが明らかとなってきたが、その多様なプロファイルや相互の可塑性が癌の進展にどのように寄与するのかについては明らかになってはいない。この多様なCAFクラスターは相互に動的な移行性を持つと考えられ、細胞の可塑性に重要な役割を持つエピゲノム制御機構がその多様性制御にも関連し、同時に間接的に腫瘍自体の悪性度などにも寄与している可能性が想起される。 本研究ではヒト膵癌組織におけるCAFの多様性をまず実験的に可視化し、その上で様々なエピゲノム制御阻害薬を投与することで腫瘍増殖や薬剤感受性をまず解析する。そのうえで様々な分画のCAFの活性化、およびその腫瘍内での多様性の動的変化に及ぼす影響を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト膵癌腫瘍組織における癌細胞と、線維芽細胞や免疫細胞を含めた間質細胞を解析する実験系として、患者由来膵癌ゼノグラフト(Patient- derived Direct Xenograft: PDX)モデルを樹立し、その過程でヒト膵癌CAFの培養系も樹立した。膵癌患者から樹立した複数のPDXラインにおいて、症例ごとにCAFプロファイルの多様性に種類や程度の差があるのかどうかを各CAFサブタイプのマーカーの発現により比較検討中である。一方でマウス膵癌モデルを用いて膵癌組織における免疫細胞プロファイルと悪性進展度、予後との相関につき検討している。また膵癌PDXを用いた研究成果を報告した。
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今後の研究の推進方策 |
膵癌症例ごとにCAFプロファイルの多様性に明らかな差異が認められるかを検証し、関連あるいは規定しうる臨床学的あるいは病理学的などの因子を探索する。
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