研究課題
本研究は膵癌の克服を掲げ、光免疫療法(photoimmunotherapy: PIT)とK3-SPG-ISVの併用により腫瘍局所の癌抗原放出と自然免疫活性化を最大化するISVの開発を目標とした。主に膵癌を自然発症するKPCマウスから樹立された膵癌細胞株(KPC-Pan)の同種皮下移植マウス(scKPC-Pan)を用いてCD44を標的抗原とするPITの実験系(PIT-CD44)を確立し実験を行った。最終年度までに、PIT-CD44とK3-SPG-ISVの併用療法(PIT-CD44/K3-SPG-ISV)による相乗効果や治療部対側の腫瘍への抗腫瘍効果(全身性の抗腫瘍効果)、さらに免疫記憶の誘導効果などを明らかにした。機序の解析では、K3-SPG-ISVを施したscKPC-Panの腫瘍を用いてRNA-seq解析を実施し腫瘍環境での強いType I IFN応答を確認した。最終年度は以下の実験を行った。①除去抗体処理によりCD8 T細胞を除去した条件でPIT-CD44/K3-SPG-ISVを試みたところ、治療側のみでなく治療対側の抗腫瘍効果が減弱することが見出され、本併用療法の抗腫瘍効果がCTLを介することが示唆された。②抗PD-1抗体との併用実験を行い、PIT-CD44/K3-SPG-ISVがPD-1阻害療法の抗腫瘍効果を増強することを見出した。③腫瘍内投与と比べて経静脈投与は実臨床では簡便に実施が可能なため、K3-SPGの腫瘍内投与(ISV)を経静脈投与(IV: intravenous injection)にした場合のPIT-CD44との併用効果(PIT-CD44/K3-SPG-IV)を評価したが、PIT-CD44/K3-SPG-IVはPIT-CD44/K3-SPG-ISVと比較して抗腫瘍効果が弱く、ISVに匹敵する効果を狙うためにはさらなる実験条件の工夫が必要と考えられた。
すべて 2022
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Scientific Reports
巻: 12 ページ: -
10.1038/s41598-022-05702-0