研究課題/領域番号 |
20K08330
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
重川 稔 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00625436)
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研究分担者 |
小玉 尚宏 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10623275)
巽 智秀 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (20397699)
疋田 隼人 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20623044)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 慢性膵炎 / TNF-α |
研究実績の概要 |
Pdx1-Cre発現下にAtg7を欠損する膵特異的Atg7欠損マウス(Pdx1-Cre Atg7fl/fl)を作成した。膵実質ではAtg7の蛋白レベルでの発現低下が確認され、同マウスの膵臓は10週齢で組織学的に腺房細胞脱落や線維化を伴う慢性膵炎像を呈していることが確認された。膵特異的Atg7欠損マウスにおけるTNF-αの発現上昇の有無を確認するために、10週齢における同マウスとコントロールマウスを比較検討したところ、膵特異的Atg7欠損マウスの血清TNF-α値や膵組織のTNF-α mRNA発現に有意な変化は認めなかった。16週齢、22週齢、48週齢と週齢を変え同様の検討を行ったが、TNF値に両群間で差は認められなかった。5週齢の膵特異的Atg7欠損マウスで膵酵素上昇を伴う膵腫大を認めるものの、コントロールマウスと比し、TNFの蛋白発現、mRNA発現に差は認められなかった。全身性TNF欠損マウスと膵特異的Atg7欠損マウスを交配し、10週齢、16週齢において膵特異的Atg7欠損マウスと慢性膵炎TNF欠損マウスの比較検討を行った。両群間で、膵組織像、に明らかな差は認められず、体重や膵重量体重比について10週齢、16週齢いずれの週齢においても両群間で差は認められなかった。今回検討した週齢では、本慢性膵炎モデルマウスの慢性膵炎の病態形成におけるTNF-αの関与は否定的であると考えられた。8週齢の野生型マウスにセルレイン反復投与により慢性膵炎モデルマウスを作成し、10週齢で慢性膵炎像が確認され、TNF-α発現上昇が認められた。今後同マウスにおける細胞死・細胞増殖関連蛋白の評価や全身性TNF欠損マウスを用いた検討を行う予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵特異的にAtg7を欠損させたマウス(膵特異的Atg7欠損マウス;Pdx1-Cre Atg7fl/fl)では10週齢で組織学的に膵腺房細胞の脱落、線維化を伴う慢性膵炎像を呈していた。しかしながら本マウスと同週齢のコントロールマウス(Pdx1-Creマウス)における血清TNF-αや膵組織のTNF-αのmRNA発現を経時的に10週齢、16週齢、22週齢、48週齢で比較検討を行ったが、いずれの時点においても両群間に差は認められなかった。より早期にTNFが関与している可能性を考慮し5週齢のマウスを用いて同様の検討を行ったところ、急性膵炎に類似した組織像(膵浮腫)や膵酵素上昇所見は認められたが、TNFαは両群間で差が認められなかった。全身性TNF欠損(TNF-/-)マウスとPdx1-Cre Atg7fl/flを交配させ、10例ずつで10週齢において膵組織像、体重、膵重量体重比について比較検討を行った。やや全身性TNFノックアウトマウスで組織像の改善が確認されたが、両群間に差は認められなかった。16週齢までエイジングして同様の検討を行ったが、組織像、体重、膵重量体重比は両群間で差は認められなかった。8週齢の野生型マウスに対して、セルレイン50ug/kg/回を1日2回14日間腹腔内投与し、セルレイン慢性膵炎モデルを作成し、10週齢で検討を行った。Vehicle群(同量のPBS腹腔内投与)と比し、腺房細胞の脱落、線維化が認められ、血清TNF-α値の上昇、膵組織でのmRNA発現上昇が確認された。
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今後の研究の推進方策 |
Pdx-1Cre発現下にAtg7をノックアウトすることで膵実質にオートファジーを抑制し、組織学的に慢性膵炎を呈するモデルマウスを用いて、TNF-α発現を評価したが、5週齢、10週齢、16週齢、22週齢、48週齢ではTNF-α発現上昇が確認できなかった。また膵特異的Atg7欠損マウスに全身性TNFノックアウトマウスを交配させた検討では、慢性膵炎の病態形成におけるTNF-αの関与は明らかではなかった。これらの結果から本モデルマウスは慢性膵炎の病態形成におけるTNF-α関与を検討する上で適したモデルではない可能性が高いと考えられるため、他の膵炎モデルにおける評価が必要と考えた。セルレイン誘導性慢性膵炎モデル(セルレイン反復腹腔内投与モデル)において、TNF-α発現上昇が確認された。同モデルにおける経時的なTNF-αの変化や全身性TNF欠損マウスに慢性膵炎を誘導し、膵組織像など慢性膵炎の表現型、細胞死・細胞増殖関連蛋白について評価を行っていく方針としている。また細胞株におけるTNF-αと細胞死の検討を、膵腺房細胞株(AR42J, 266-6)を用いて進めている。
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