研究課題
生活習慣病や化学療法などに伴う消化管運動機能異常は重要な臨床課題の一つであり,モチリン受容体(MLNR)やグレリン受容体(GHSR)作動性物質の開発およびその臨床応用が切望されている。申請者は,2000年からMLNR,GHSRにおけるリガンド結合の分子機構の解析とin vivoにおける両受容体の生理機能の解析を継続して研究している。本研究課題は,受容体活性化機構,脱感作機構を解明するとともに,MLNRトランスジェニック(TG)マウスを用いて,生活習慣病や各種薬剤,ストレス病態などにおける中枢と消化管,肝胆膵の臓器連関,消化管ホルモン相互の連関の解明と適切な治療法を確立することを目的としている。2020年度は,(1) Halo-tagged MLNR発現CHO細胞を用いたリガンド刺激では,エリスロマイシン(EM)刺激では脱感作が見られないものの,モチリン(ML)刺激では脱感作がみられ,この機序にGRK,b-arrestinが関与していることを,両分子の阻害系,過剰発現系を用いて明らかにした。(2) MLNR-TGマウスにCRHを投与した不安モデルマウスの胃排泄能は低下しており,MLNR,GHSRリガンド投与で改善することを明らかにした。(3) MLNR立体構造の解析のための無細胞合成系を用いたMLNRおよびnucleotide free Gαの合成に成功した。2021年度は,in vitroでのMLNR活性化機構の解析,in vivoでのMLNR-TGマウスを用いた消化管運動解析,を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
2020年度の研究は,(1) MLNR脱感作機構の解析,(2) MLNR-TGマウスを用いた消化管運動の解析,は当初の計画通りに進展し,さらに2021年度の予定であった(3) 無細胞合成系を用いたMLNRおよびnucleotide free Gαの合成,に成功した。しかし,(4) MLNRのG蛋白活性化機構の解析は少し遅延している。
2021年度は,(1) MLNR発現CHO細胞,およびMLNR発現膜分画にリガンド結合後,[35S]- GTPγS,GDPを反応させ,GTPγSの結合能を測定するとともに,抑制系のGAP(GTPase activating protein)活性は,recombinant GAPと検出可能な速度でGDP解離が起こるGα変異体を用いて,解離したGDPを,GDP抗体に結合している蛍光トレーサーと置換することにより検出して測定することにより,モチリン受容体のG蛋白活性化機構を明らかにする。(2) 無細胞蛋白合成系を用いて作成したMLNR,Gαqを種々の割合で混合し,リガンド結合能,リガンド刺激によるCa反応を確認し,立体構造の解析に有用であることを明らかにする。(3) MLNR-TGマウスを用い,ML,EMあるいはその他のマクロライドを慢性投与し,in vivoでの胃排泄,消化管運動における脱感作機構を明らかにする。
2020年度の繰越金は32,696円であったが,研究は当初の計画通りに進展しており,特に問題はない。2021年度は,当初の予定通り,in vitroでのMLNR活性化機構の解析,in vivoでのMLNR-TGマウスを用いた消化管運動解析,を行う予定である。
すべて 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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https://www.m.ehime-u.ac.jp/course/