研究課題
本研究は、食道アカラシアの病態解明を目指して以下の4点に注目して検討を行った。[1] 神経型nAChR刺激による生理的ブタ下部食道括約筋 (LES) 弛緩反応の機序解明:ブタLES輪走筋を用いて、nAChR のDMPPアゴニスト刺激によるLES弛緩反応の機序を神経細胞-カハール の介在細胞(ICC)-平滑筋細胞 ネットワークの観点から解明した。DMPPによるnACh受容体刺激が引き起こす一過性弛緩反応には過分極因子が関与するが、神経伝達物質として放出されたATPがICCを刺激し、ICC上のクロライドチャネルを活性化することでICCを過分極させ、gap junctionを介してLES弛緩反応が誘導されることを明らかとし、研究成果をEur J Pharmacol 910:174491, 2021に報告した。[2] 食道アカラシアで認めるLES弛緩不全の機序解明:臨床検体を用いて平滑筋収縮を制御するミオシン軽鎖リン酸化レベルを評価したところ、食道アカラシアでは対照群と比較してリン酸化レベルが有意に低下していることを見出した。さらに食道アカラシアでは、ミオシン脱リン酸化酵素を抑制するCPI-17の発現と活性化が低下して、食道アカラシアにおけるミオシン軽鎖リン酸化レベルの低下を引き起こすことを示す結果を得た。[3] 食道細菌叢解析を用いた食道アカラシアの病態解明:アカラシア患者の食道粘膜菌叢は、対照群(早期胃癌で治療をおこなった患者)と比較して、嫌気性菌を中心とした20種類以上の菌叢変化を認め、αdiversityで示す多様性が増加している結果を得た。[4]数理モデル解析を用いた食道アカラシアの病態解明:HRM検査結果に基づいて食道運動を模倣する数理モデルの作成に成功した。現在、論文投稿中である
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