研究課題
臨床研究として、まず、肘静脈からの門脈圧(肝静脈楔入圧較差(hepatic venous pressure gradient; HVPG))測定法を確立した。その後、C型慢性肝疾患に対する直接作用型抗ウイルス薬(DAA)治療前後のHVPGおよび門脈圧亢進症の変化と、それに関連する因子について解析した。C型肝炎ウイルス(HCV)排除により肝機能や肝線維化マーカーは改善するが、HCV排除後もHVPGの上昇や食道胃静脈瘤の悪化を来す症例がある。M2BPGi、肝弾性度、経直腸門脈シンチグラフィ―での測定値、血清オートタキシン、肝細胞機能がHVPGや静脈瘤に関連する因子として確認でき、報告した。 2023年度は、非代償性C型肝炎関連肝硬変患者を対象に解析した。重度の門脈圧亢進症の割合は、HCV排除後に減少し(p = 0.046)、HVPG が低下した患者では、上昇した患者よりも治療前の脾臓容積が小さいことがわかった (p = 0.028)。非代償性C型肝炎関連肝硬変患者においてもHCVを排除すると、細胞機能と門脈圧亢進症の改善が期待できることを論文報告した。臨床においては、低侵襲な検査で門脈圧を予測し、対応していくことが望まれる。超音波検査で門脈圧を予測する方法の確立を検討中である。一方、基礎研究として、肝線維化に関与する主要な細胞型である肝星細胞 (HSC) で発現されるサイトグロビン (CYGB) の抗線維化作用について解析を継続中である。ヘキサヒスチジンタグ付き組換えヒトサイトグロビン (His-CYGB)投与が、TAA または DDC マウスを投与されたマウスにおいて、肝臓の炎症、線維症、および酸化的細胞損傷を顕著に抑制すること、またそのメカニズムについて解析し、報告した。しかしながら、門脈圧低下関連する分子・細胞メカニズムの解明には至っておらず、さらに検討が必要である。
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Journal of Gastroenterology
巻: 58 ページ: 394~404
10.1007/s00535-023-01963-2