研究課題/領域番号 |
20K08340
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
股野 麻未 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (20439889)
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研究分担者 |
南木 康作 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30571137) [辞退]
佐藤 俊朗 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (70365245)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 胃がん / オルガノイド / エピゲノム |
研究実績の概要 |
胃がんにおいて,ゲノム変化によらないエピジェネティックな発がん機序が注目されているが,従来の動物モデルなどで再現・解析が困難であり,詳細な分子基盤の解明は十分ではない.本研究ではオルガノイドを用いて発がんおよび悪性化に寄与するエピゲノム変化の解明と標的治療開発を目指した. (1)研究分担者である南木らが2018年に報告した正常胃上皮,腸上皮化生および胃がん37検体のオルガノイドライブラリー(Cell 2018)について検体数の拡張を行った. (2)構築したオルガノイドライブラリーを用いてクロマチン免疫沈降シークエンス(ChIP-seq)およびtransposomeを使用した網羅的オープンクロマチン領域解析(ATAC-seq)の手法を用いてエピゲノム解析を行った. (3)CRISPR-Cas9によるゲノム編集技術を用いて,転写因子の摂動解析研究を行った.転写因子ネットワーク解析で得られた結果をもとに,推測される転写因子を正常上皮や化生・がんオルガノイドにノックアウト,もしくは過剰発現させることによって,細胞系列特性の変容をin vitroの実験系で再現した.このような手法で,ゲノム編集技術を利用した遺伝学的変化の再構築と,その形質変化の検証を行った. (4)HTSを利用した新規治療探索 リスト化したエピジェネティック薬からHigh throughput screeningの手法で,胃がんの特定の集団に有効な薬剤の同定を目指した.有効性が示された薬剤はさらに,異種移植システムを用いてin vivoでの有効性の検証を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までで構築したオルガノイドライブラリーに対して,クロマチン免疫沈降シークエンス(ChIP-seq)およびtransposomeを使用した網羅的オープンクロマチン領域解析(ATAC-seq)の手法を用いてエピゲノム解析を行い,精度の高い結果を得た.この転写因子ネットワークのデータを元に,オルガノイドへのゲノム編集技術を用いて,転写因子の摂動実験によるプロスペクティブな検証を行った.さらに約1800種類の転写因子を標的したCRISPR sgRNA ライブラリーを作成し,これを胃がんオルガノイドに感染させることでネガティブスクリーニングの手法によって細胞系列特性変容の因果性を担う転写因子群の絞り込みを行った.同様に,エピゲノム制御を司るタンパクをリスト化し,これらを標的としたCRISPR sgRNA ライブラリーの作成も行った.当ライブラリーを用いたスクリーニングも施行し,治療標的となりうるエピゲノム因子の絞り込みも行なっている. このように計画は順調に進行している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られたデータから,転写因子を絞り込み,疾患形成の因果性を担う転写因子及び遺伝子異常を同定する.ゲノム編集技術を用いて,プロスペクティブな検証を引き続き行う.疾患因子の同定と追加遺伝子改変を行う解析サイクルを繰り返し,腫瘍組織の再現を目指す.さらにin vitroでの増殖因子への依存性や,異種移植実験による病理組織といった形質との相関性を確認する. また,治療標的となりうるエピゲノム制御タンパクの同定も行う.High Throughput Screeningの手法と合わせて胃がんの特定の集団に有効な薬剤を同定する.さらにエピゲノム解析およびゲノム編集技術と合わせて,有効性の機序や,有効性を示す胃がん集団の特徴について明らかにし,新規標的治療開発に結びつけることを目指す.
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