研究課題/領域番号 |
20K08342
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
政木 隆博 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (60535657)
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研究分担者 |
山根 大典 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主席研究員 (60782761)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 肝癌 / 肝炎ウイルス / C型肝炎ウイルス / 宿主因子 / miRISC |
研究実績の概要 |
肝癌の予後は不良であり、発癌や悪性化の病態解明は急務である。近年、遺伝子発現制御に関わる小分子RNAであるマイクロRNA(miRNA)の発現・機能異常が癌化に関与することが報告されている。特に、肝臓で高発現している癌抑制性miRNAであるmiR-122の発現低下、機能障害が肝癌の発症や悪性化と強く関連することが指摘されている(Tsai WC, et al. J Clin Invest. 2012; Kojima K, et al. Nat Commun. 2011)。申請者はこれまでの研究において、① C型肝炎ウイルス(HCV)の感染により癌抑制性miRNAであるmiR-122、miR-15、miR-16、miR-130(いずれも肝細胞で高発現)の機能障害が引き起こされること、これらのmiRNAのうち、② miR-122の機能障害は、HCV蛋白質がmiRNAの機能発現に重要とされるArgonaute-1(AGO1)蛋白質と結合し、AGO1の機能を抑制することにより惹起されることを見出した。また、③ miR-122の機能障害はアルギニンやグルタミンなどのアミノ酸トランスポーターの発現を増強させ、肝癌細胞の増殖を促進させることを明らかにした。以上の結果は、HCV感染により誘発されるmiR-122の機能障害がHCV関連肝癌の発症および悪性化に関与することを強く示唆している。 令和4年度は、HCVの細胞培養系と約2,000種類のmiRNAを搭載するmiRNA mimic/inhibitorライブラリーを用いて、HCVの感染複製増殖を制御する複数種類の新規miRNAを同定した(令和3年度からの継続研究課題)。また、miR-122の機能障害により発現が亢進する宿主細胞性因子を3種類同定し、それらがHCVの感染複製増殖を正に制御することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大による勤務制限、研究資材の調達不足により、一部の研究(免疫沈降実験、miRNA機能不全細胞の樹立、動物実験)の進捗が当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、in silico解析およびmiRNA mimic/inhibitorを用いた細胞培養実験により、新規同定miRNAの標的遺伝子を探索する(令和4年度からの継続研究課題)。さらに、新規同定miRNAもしくはその標的遺伝子発現を制御した肝細胞を樹立し、増殖能、腫瘍形成能、細胞周期、抗癌剤への反応性などをin vitro(細胞培養実験)、in vivo(ヌードマウスへの移植実験)で評価する(令和4年度からの継続研究課題)。HCV感染後のmiR-122機能障害により発現が増強する3種類の宿主細胞性因子に関して、それらがHCV生活環に関与するメカニズムをgain-of-functionおよびloss-of-function実験を用いて明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大による勤務制限、研究資材の調達不足により、当該年度に予定していた一部の研究(免疫沈降実験、miRNA機能不全細胞の樹立、動物実験)の遂行に遅れが生じたため。 次年度使用額は、遅れが生じた研究の遂行のために計画的に使用する予定である(抗体・試薬の購入、ヌードマウスの購入など)。
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