研究課題/領域番号 |
20K08343
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
増崎 亮太 日本大学, 医学部, 助教 (20866149)
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研究分担者 |
神田 達郎 日本大学, 医学部, 准教授 (20345002)
森山 光彦 日本大学, 医学部, 教授 (50191060)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肝線維化 / 細胞外マトリックス / インテグリン |
研究実績の概要 |
インテグリンは細胞表面に存在し、その細胞外ドメインは細胞外マトリックス(ECM)の受容体としての細胞-ECMの細胞接着の主役であり、細胞-細胞間の接着にも関与する。細胞内ドメインは細胞骨格制御タンパク質や非レセプター型チロシンキナーゼを含むシグナル伝達分子と結合する。インテグリンは、細胞接着、遊走、増殖、分化、ECMの再構築に関わるだけでなく、各種サイトカインのシグナルを調節するなど多様な機能を持つことがわかっている。 肝臓に発現するインテグリンはすべてβ1鎖をもっており、これを肝臓特異的に欠失させ、正常肝組織に起こる変化とその機序を検討する。我々はインテグリンβ1を肝特異的に欠失させることで、肝細胞の配列の乱れ、胆管細胞の増生、肝臓の線維化を来たすことを報告したが、これは欠失に伴う肝細胞死(アノイキス)がその一因を担っている可能性が示唆された。アノイキスとは、細胞とECM接着の喪失で誘導されるアポトーシスである。そのため、肝線維化モデルを作成し、ECMが過剰にある状態で、欠失が肝線維化にどのような変化を来たすかを検討する。 これまで、インテグリンβ1肝特異的欠失マウスにおいて、肝線維化とTGFβの活性化機序を調べるために、インテグリン欠失初代肝細胞培養液を用いてJS1細胞を培養したところ、コントロールと比し、collagen 1α1とSMAのmRNA発現上昇による向線維化シグナルの亢進を認めた。これまでの結果をまとめ、投稿し英文誌に受理された(Am J Pathol 2021, 191:309-319)。 本年度は、ヴァンダービルト大学医療センターから、インテグリンβ1のfloxedマウスを入手し、飼育を開始した。また、肝特異的欠失マウス作成のためにAAV8-MUP-iCreウイルスを入手した。次年度はマウスの交配・繁殖を継続し、チオアセトアミド投与による肝線維化モデル作成予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス星細胞株であるJS1 cellの培養を行い、インテグリンβ1肝特異的欠失マウスの初代肝細胞培養上清を加えることで向線維化シグナルの活性化を認めた。 上清中のTGFβのタンパク質濃度は野生型に比し、欠失型で有意に上昇しており、これまでのデータと合わせインテグリンβ1の欠失が、TGFβの活性化と星細胞の活性化を来たすことが確認できた。 マウス線維化モデルの作成については、Jackson Laboratoryから購入予定であったマウスが胚凍結となってしまったため、研究代表者の前任地であるVanderbilt University Medical Centerからマウスを移送することとなり、MTA契約を締結し、インテグリンβ1floxedマウスを入手し、飼育交配を開始した。現状では、実験遂行に必要な繁殖数を得られておらず、繁殖ペアを増やし観察中である。また欠失マウス作成に必要なAAV8-MUP-iCreウイルスとコントロールのeGFPウイルスについては、すでに入手している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
インテグリンβ1floxedマウスに、AAV-MUP-iCreあるいはAAV-MUP-eGFPを投与し、欠失あるいは野生型マウスを作成する。チオアセタミドを投与し、コントロール群で肝線維化モデル作成をHE染色とSirius Red染色で確認する。欠失群で線維化の程度を検討する。また関連する向線維化シグナルのmRNA 発現をqPCRで、タンパク発現をウエスタンブロットで検討する。これまでの実験では、欠失マウスで星細胞の活性化、TGF-βの発現亢進、MMP-13の発現低下、TIMP-1の発現亢進を認めた。検体採取後は迅速に関連シグナルの検討ができるものと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの交配を継続しており、マウス線維化モデル作成と検体採取が次年度になるため、検体採取後に購入予定の物品については次年度に行う予定とした。
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