研究課題
2021年度までの技術的な改善により,全14種中TCF-4M以外の13種のTCF-4 isoformsの半定量的測定が可能であった.測定の結果,ヒト肝癌や膵癌細胞株では概ねTCF-4 isoforms全体の発現レベルは低く,大腸癌や胃癌細胞株では高い傾向にあった.ヒト大腸癌組織を含めた解析において,癌の悪性化に伴う特徴的なパターンは見られず,むしろWnt/beta-catenin/TCF-4経路のcanonical pathwayが活性化している癌(大腸癌や胃癌)とそうでない癌(肝癌や膵癌)とに分けることができる可能性が示唆された.さらに,p53の解析の結果から同一クローンからの発生と考えられる高分化型肝細胞癌株HAK-1Aと低分化型肝細胞癌株HAK-1Bにおいて, TCF-4 isoformsの発現パターンがほぼ同じであることもわかった.このことからも,TCF-4 isoformsは癌の悪性化に伴って劇的に変化するのではなく,癌の起源臓器由来のtraitsを表していることが示唆された.それは膵神経内分泌腫瘍の細胞株(3種)におけるTCF-4 isoformsの解析からも裏付けられた.すなわち,発生起源が,肝癌や膵癌,胃癌などと全く異なる腫瘍のisoformパターンは,上記癌種のパターンとは大きく異なっていたからである.肝癌細胞とは発生臓器が同じでも大きく異なったTCF-4 isoformsパターンを示した細胞株があった.それは胎児肝由来不死化肝細胞株だった.この細胞ではTCF-4Eが最も強く発現しており,TCF-4BやTCF-4Jがそれに続いた.このことは,肝において未分化な細胞ほどTCF-4 isoformsの発現が全体的に高く,またTCF-4Eが特異的に高いことを示唆している.肝癌細胞にTCF-4Eの発現が相対的に乏しいことを考えると,TCF-4Eは発生の初期段階で働き,非腫瘍性の保持に必要なisoformであることも考えられ,今後,幹細胞レベルでの解析に役立つと考えられた.
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Clinical and Molecular Hepatology
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